EXHIBITIONS

ニッポン貝人列伝 -時代をつくった貝コレクション-

2018.03.08 - 05.26

キセルガイ科の標本 (黒田コレクションより) 西宮市貝類館蔵 撮影=佐治康生

キセルガイ科の標本 (黒田コレクションより) 西宮市貝類館蔵 撮影=佐治康生

『貝千種(かいちぐさ)』(1914-5、1922)全4巻。美術に造詣の深かった平瀬與一郎による貝類図鑑。日本の版画技術の粋を尽くした多色刷木版画。出版は木版画、美術出版で知られる京都の「芸艸堂(うんそうどう)」。 大阪市立自然史博物館蔵(鳥羽水族館寄託) 撮影=佐治康生

「オオシマヒオウギ」(河村コレクション)。採集地は奄美大島。河村良介はお気に入りの貝の標本を、紫色に染めた真綿入りケースに保存していた。これはその一つ。 国立科学博物館蔵 撮影=佐治康生

 一時代をつくった貝人たちのコレクションが一堂に揃う初の展覧会が開催される。

 古くから貝に魅了され、食し、暮らしに利用してきた日本人。江戸期には、好奇心あふれる博物学者らによって貝は収集され、精緻で美しい図譜が編まれた。明治時代に入ると、貝類が科学的に研究されるようになり、日本における近代貝類学が幕を上げる。

 新たな学問の端緒を開いたひとり、実業家の平瀬與一郎は、日本を中心に採集した貝標本を海外に販売する傍ら、知識を高め、私設の貝類博物館まで開設。また、弟子の黒田徳米は日本の第一級の貝類学者となり、以後、日本の貝人たちは数を増やしながら、コレクターと研究者が車の両輪となって貝類学を発展させていった。

 本展では、日本近代貝類学の黎明期を築いた貝人10人の列伝と厳選された貝コレクションを周辺の実資料とあわせて紹介。かたつむりといったマニアックな陸貝の世界を探求する研究者、いっぽう国内外、美麗から微小まで追い求めるコレクターなど、貝に捧げた熱意と一心不乱な人生が綴られる貝人列伝を通して見る貝標本は、造形以上の面白さや魅力にあふれている。