EXHIBITIONS

Damascene-布目象嵌の東西

2024.12.11 - 2025.03.02

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 清水三年坂美術館で、企画展「Damascene-布目象嵌の東西」が開催される。

 鉄などの硬い金属の表面に様々な方向から刻みを入れて荒らし、その上に金や銀などの薄い板を食い込ませる技法を布目象嵌と言う。シリアのダマスカスにおいて紀元前よりつくられていた金銀象嵌細工が起源とされ、その技法はのちに「Damascene(ダマシン)」と称された。その技法がシルクロードの流れに乗って日本に伝わり、桃山時代になるとさかんに用いられるようになり、以降、武具や装飾品などの金工品を彩った。しかし、明治時代に入り、武士という身分が廃止されたことにより多くの職人が困窮していく。

 肥後の職人から布目象嵌を学び、京都で刀剣商をしていた初代駒井音次郎も同様に職を失い、明治6年に輸出向けの製品をつくることを志す。音次郎によって生み出された製品は明治後半に海外で人気を博すようになり、「Komai Work」と呼ばれ、のちに「Damascene Work」と称された。

 いっぽう、江戸では、慶応年間に装剣金工職人の初代鹿島一布が、鉄地ではなく四分一や赤銅地に布目象嵌を施す技法を発明した。一布は同職であった兄・初代鹿島一谷とともに布目象嵌専門の職人となり、明治時代には2代一布が更に表現の幅を広げていく。一布は2代で途絶えるが、一谷の家系はそれ以降も続き、鉄地に象嵌を施す他の布目象嵌工とは一線を画した独自の作風を打ち出し、国内外の博覧会・展覧会で活躍している。

 本展では、清水三年坂美術館所蔵品のなかから、京都の駒井音次郎と東京の鹿島一谷という同時代に布目象嵌に携わった人物を取り上げて作品を展示するほか、江戸から昭和初期にかけてつくられた布目象嵌の優品を展示。日本の東西でそれぞれの輝きを放った細緻な技に注目してほしい。