木村和平「石と桃」

　PURPLEで、木村和平による個展「石と桃」が開催されている。

　ものの大小や遠近が現実と異なって見えたり、色覚・時間感覚に異常をきたすなど様々な症状が現れる「不思議の国のアリス症候群」。10年前に症状の名を知った木村は写真表現を始めるのと同時期にこの症候群についての作品をつくりたいと思うようになる。これまで繰り返してきた数々の実験では、ときに写真の歴史とも交差しながら、プリントにその感覚を宿すことを試みてきた。

　展覧会タイトルである「石と桃」は、モノトーン調の硬いものと発色のよい柔らかいものとが混ざり合う、木村が日常的かつ突発的に見ているイメージの一つを言語化したものだ。幼少期から続く体験をもとにしてつくられた写真が、PURPLEの空間に展開される。