EXHIBITIONS

勅使河原蒼風 個展

勅使河原蒼風 曼陀羅 1978
© Sogetsu Foundation / Courtesy of Sogetsu Foundation and Taka Ishii Gallery / 撮影: 髙橋健治

 タカ・イシイギャラリーで、勅使河原蒼風の個展が開催されている。

 勅使河原蒼風は華道家・勅使河原久次の長男として1900年に生まれる。幼いときからいけばなの指導を受け才能を発揮するが、形式主義的なそれまでのいけばなに疑問を持ち、父と決裂して27年に東京で草月流を創流。従来のいけばなを大いに逸脱する、戦後の「前衛いけばな運動」を小原豊雲、中川幸夫らとともに主導する。50年代から70年代にかけて、国内はもとより欧米各地でいけばなの展覧会やデモンストレーションを精力的に行う傍ら、多数の彫刻、絵画、書、コラージュ作品を制作・発表。

 62年には芸術選奨文部大臣賞を受賞し、フランス政府よりレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエ章(1961)と芸術文化勲章オフィシエ章(1960)を受章した。近年いっそう再評価が進む勅使河原蒼風は、今年3月に開催される横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」にも参加。

 いけばなを構成する3つの要素として、勅使河原は線、色、塊を挙げている。とりわけ線を重要視した勅使河原は、いけばなや彫刻作品に加え、多くの書の作品を制作している。その理由は、同じ線(枝)で構成される書にいけばなとの相似性を見ていたからだ。揮毫された文字は植物のように有機的で、まるで表象されている概念が、象形文字である漢字の殻を食い破って外部へほとばしるかのようなエネルギーを発している。

 60年代の初めから勅使河原は富士山を主題とした屏風、油絵、水彩作品を数多く制作。山中湖畔に構えた別荘から、日の出前、日中、夜までこの霊峰を眺め「変幻無限であり、生々流転」な姿を、多様な色彩と柔らかな線、そしてデッサンのような素早い筆致で描いた。勅使河原の彫刻作品や書からは、獣のように猛々しい自然や、それに対する畏怖の念が感じられるが、富士山の作品からは親しいものを愛でるような穏やかな感情、そして自らの心の変化に瞬時に反応し、それを造形せずにはいられない強靱な創作への欲望を見ることができる。

 本展では、屏風に描かれた書や「富士山」を主題とした絵画など、平面作品を中心に作品約12点を発表する。