EXHIBITIONS

カズ・オオシロ「Nothing New Under the Sun」

2023.11.18 - 2024.01.13

カズ・オオシロ California Calligraphy (Sophia III)

 MAKI Gallery 天王洲Ⅱギャラリースペースで、ロサンゼルスを拠点に活動するアーティスト、カズ・オオシロの個展「Nothing New Under the Sun」が開催されている。

 オオシロは1967年沖縄県生まれ。カリフォルニア州立大学で1998年と2002年にそれぞれ文学士と美術学修士を取得し、現在ロサンゼルスを拠点に活動している。高校卒業後すぐにカリフォルニアに渡った。ポップアートやミニマリズム、抽象的表現主義といった美術史の流れに独自の視点で向き合い続け、美術作家として作品と呼ばれるモノをつくることの本質を探り続けている。

 本展ではオオシロの代表作であるキャンバスを用いた立体作品《アンプ》、《I型鋼》、《ゴミ箱》などの新作に加え、新たなシリーズとなる「California Calligraphy」を発表する。本シリーズは、オオシロがロサンゼルスで目にしてきた車の数々がスモッグなどの影響で埃まみれになる様子、そしてその埃の上から車体に落書きする様を抽象的な絵画に変換しようとする試みである。

 本展は、これまでは立体作品の補完的な位置づけを果たしていた絵画作品をシリーズとして展示する初めての機会となる。本シリーズの作品はキャンバスのすべての角が丸みを帯び、面と縁が一体化している。それにより車のボディーのような曲線的な質感が生み出されており、純粋な絵画とは一線を画した形容し難い佇まいを持っている。

 オオシロは、試行錯誤を重ねて生み出した鏡面的な表面の上に、車に使用するワックスを用いて筆などでイメージを描き、さらにその上からエアブラシで埃のような塗装を施している。塗装が乾いたのちにワックスを落とすことで、下地の部分がわずかに浮かび上がるかたちでイメージが姿を現すが、それは角度によってまったくとらえきれない微妙な存在と言える。それらのイメージは、オオシロが作品、モノをつくるということについて長年思索を巡らせるなかで辿り着いた。近代以前の人間のあり方、原始的な宗教観や占星術、世界中の遺跡に溢れる抽象的なシンボルなどとのつながりを感じさせる。