百頭たけし 個展「と-れん」

　Token Art Centerで、百頭たけしによる個展 「と-れん」が開催されている。

　百頭は2007年頃より写真作品の制作を始めた。百頭の制作プロセスは、グーグルマップの航空写真モードで主に関東の郊外などを眺め、気になる地点をズームアップ、ストリートビュー画像などから期待する場所が見つかればピンを打ち、その後現地を訪れカメラで切り取っていく。ネットと現実、地図と現実の土地など、百頭の制作はふたつの世界に跨り行われていると言える。そこでの、様々な人々の意識と無意識、必然と偶然、人工と自然、美と醜がない混ぜになり、「ジャンクヤード」と百頭が呼ぶどこか得体の知れない風景がたかちづくられていく。

　本展では、ホルヘ・ルイス・ボルヘスのふたつの短編が下敷きになっている。ひとつは「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」である。百科事典のなかにのみ存在していたトレーンという観念世界が、次第に実体を伴って現実世界を侵入し、ついには置き換わっていく。また物語中、フレニールという複製物質が登場する。

　そしてもうひとつは「学問の厳密さについて」である。ある帝国が地図制作の技術を極めて、ついには1/1の実寸大地図をつくり上げてしまうという話だ。いずれも、もうひとつの世界の現実世界への侵入、そして複製を重要な要素として読むことができる。