EXHIBITIONS

佐藤信太郎「Boundaries」

©︎ SATO Shintaro, Courtesy of PGI

 コミュニケーションギャラリーふげん社で、佐藤信太郎個展「Boundaries」が開催されている。

 佐藤は1969年東京生まれ。土地が持つ固有の雰囲気「地霊(ゲニウス・ロキ)」をテーマに、おもに東京をフィールドに、連綿と続く歴史の多層的なレイヤーと人の営みを、写真を通してとらえている。「Boundaries」は、2021年「CHIBA FOTO」で初公開され、23年3月にPGIで本シリーズ初の個展が開催された。今展では、同シリーズの異なるプレゼンテーションで、未発表の最新作を含む約16点を展示する。

 本作「Boundaries」は、前作「The Origin of Tokyo」の撮影の際に、皇居がかつて海に面した場所で、その境界から都市(江戸/東京)が発展していったことに興味を持ったことが制作のきっかけ。佐藤の住むエリアには、かつて東京湾に面し、海と陸の境界であった数キロ続く崖があり、鬱蒼と草木が生い茂るその崖を数年間撮影し、異なる季節に撮影した複数の写真を使用して一枚の写真をつくり上げる。佐藤は「写真に写る草木の形に沿って切り抜いた画像を複数枚組み合わせ、組み替えることを何度も繰り返してイメージをつくり上げていく過程は、恣意性を極力廃した作業であり、突然思いもよらない全体像に到達することがある」という。

 異なる時間、異なる場所が有機的に絡み合い、密度高く、質量が感じられるような写真は、多層的な境界のあり方を美しく表象している。また、その果てしない組み替え作業によって、複数の写真が重なったデータを統合する際、グリッチ(バグ)が偶発的に生成される。それらを用いて本作はさらなる展開を見せており、本展ではその一端も紹介する。