EXHIBITIONS

久保田沙耶展「もぬけの城」

Yu Harada
2023.09.28 - 10.22

久保田沙耶 もぬけの城

 Yu Haradaで、久保田沙耶の個展「もぬけの城」が開催されている。

 久保田は1987年茨城県生まれ。筑波大学芸術専門学群を卒業し、東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻油画研究領域を卒業した。久保田は過去の記憶や日常の何気のない風景、人や場所との出会いによって生み出される痕跡などを組み合わせ、平面や立体など複数のメディアを使い、作品を制作している。

 瀬戸内国際芸術祭2013で発表された《漂流郵便局》は、以前郵便局として使われていた建物を使用し、届け先のわからないモノ、コト、ヒトに宛てた手紙を預かるアートプロジェクトとして大きな反響を呼んだ。2015年にロンドンのアーティストインレジデンスで訪れた美術修復学校での経験を契機に、失いかけているモノの価値や存在の再構築を試みている。

 本展のタイトルである「もぬけ」とはもともと「もぬく」という動詞があり、蝉や蛇が外皮を脱ぎ、脱皮するという意味や、抜けて外に出る、脱するという意味で、古くは平安時代の万葉集でも使われている。この言葉には「なにも無い」ということより「かつてここに何かがあった」ということが強調されている。本展では、白いインクによって描かれたガラスを何層も重ねた作品と、分厚くブロック状になっている半立体の作品を展示する。