山崎由紀子「ここにバグがある」

　VOILLDは、山崎由紀子の個展「ここにバグがある」を開催。物事の意義や本質と向き合い続け、さらなる進化を遂げた山崎の最新作を展示する。

　1988年京都に生まれた山崎は、学生時代にヒロ杉山のもとでデザインを学び、現在は東京を拠点に制作。国内での様々なグループ展への参加や個展の開催など、精力的に作品を発表をしながら、企業やブランド、雑誌などへの作品提供、自身によるZINEの制作やグッズデザインと、多彩なジャンルにおいて活動の場を広げている。

　山崎は、デジタルとアナログが著しい進化を遂げた80年代に生まれ育ち、ガラケーからスマートフォン、ロースペックのPCからMacBookなど、近年すさまじい進化を遂げてきた様々なデジタルガジェットと、それに伴ってかたちや速度を変える情報収集の変化を、身をもって体感してきた。

　制作にあたっての資料集めも、雑誌やチラシなどの紙媒体から、近年ではネット上から集めるようになり、日々インターネットから流れてくる膨大な数の画像のなかから目に止まったものを素材としてスクラップし、それらをiPhoneやPhotoshopでデジタルコラージュとして再構築した上で、キャンバスにペインティングというかたちで落とし込む手法により作品を制作するようになった。
　
　グラフィカルなモチーフ、鮮やかな色彩、何気なくも力強い線、躍動感に満ちた大胆な構図。デジタルのメディアとアナログの手法を巧みに操り、自由に横断し続ける山崎の作品群は、時に作家自身の思惑を超えて、情報やガジェットの変化とともに多様なかたちに進化し続けている。自身の嗜好だけでなく、大衆的なニュースや流行、時代の移り変わりまでをも肯定的に楽しみながら、鮮明に記録している。

　本展「ここにバグがある」では、コンピュータならではのバグ現象からインスピレーションを得た、新作ペインティングを発表。無意識と故意を縦横無尽に行き来し、自身でもバグという現象を楽しみながら制作された作品群からは、山崎の内部に存在する創意工夫と、新たな領域への飽くなき探究心を汲み取ることができる。