EXHIBITIONS

石川卓磨、新津保建秀、松浦寿夫、松平莉奈「それを故郷とせよ(手が届く)」

2022.10.29 - 11.27

石川卓磨 夜のかたまり 2021

新津保建秀 Untitled 2022 協力=アートドラッグセンター

松浦寿夫 朝の食卓 2020 撮影=中川周

松平莉奈 文字絵(模写) 2022

 TALION GALLERYは、グループ展「それを故郷とせよ(手が届く)」を開催。石川卓磨、新津保建秀、松浦寿夫、松平莉奈の作家4名が参加する。

 石川卓磨は、写真や映像における事実と虚構、記録と表現の狭間にある、メディアそのものが孕む批評性をとらえながら制作し、作品化してきた。連続写真を一コマのフレームとしてつないだ映像作品や、映画のワンシーンや絵画の構図を想起させる写真作品など、そこに写し出されたものの様々な読み解きを呼び起こす。

 新津保建秀もまた、ポートレイトや風景に対する新たな解釈によって表現を行う写真家だ。写真や映像のなかに往還する記憶や複数の時間軸をとどめるシリーズなどを近年は発表している。写真家としてのキャリアと並行して、改めて絵画やドローイングを学び直すなど、複数的な身体性を介して場所の立ち現れに関わる制作手法を展開している。

 松浦寿夫は近代主義的な美術史の言説を検証しながら、絵画でしか表現しえない感覚の論理を追求して制作を行ってきた。これまでに「庭」や「気象」などを題材として、様々な筆触や色彩が干渉し合い積み重なっていく過程から、局所的かつ可変的なイメージの連なりを提示し、単数化を免れた平面のコンディションを包摂した絵画を描いている。

 松平莉奈は、日本画の領域で培われた技術や画材を咀嚼しながら、他者について想像することをひとつの主題として、人物などを中心とする具象画を描いてきた。昨年からは韓国で漢字に装飾が加えられた「文字絵」と呼ばれる民画を学ぶなかで、塗り込められることで速度を失った線について思考を深め、描線が生む時間の感覚に焦点を合わせて制作を行っている。

 本展では、眼と手のはたらきが隠喩やテクノロジーとして、主体に内面化されコミュニカティブな機構に絡めとられる現在の状況を前提としながら、作家4人による絵画や写真などの制作過程において不可避的に直面する像と実体、眼差しと現れ、記憶と現前などのずれやせめぎ合いの帰結としての美術を提示する。眼と手による具体的相克としての制作から、多様なイメージや歴史に接続することも切断することもできる主体のバリエーションの条件を問い直す。