EXHIBITIONS

母袋俊也

魂-身体 そして光 《ta・KK・ei》《TA・GEMBAKZU》

2022.10.22 - 2023.01.22

母袋俊也 ta・KK・ei study Photo by Ali Uchida

母袋俊也 ta・KK・ei 2022-1 Photo by Ali Uchida

母袋俊也 展示構想プランドローイング Photo by Ali Uchida

アトリエ風景 Photo by Ali Uchida

 母袋俊也(もたい・としや)は、絵画とは何かという問いを、画面に込められた精神性と、「フォーマート(縦横比)」の形式の問題から理論的に探究し続けている美術家。その展覧会「母袋俊也 魂-身体 そして光 《ta・KK・ei》《TA・GEMBAKZU》」が、原爆の図 丸木美術館で開催される。

 母袋は1954年長野県生まれ。78年に東京造形大学美術学科絵画専攻を卒業後、83年にドイツ・フランクフルト美術大学に留学。ドイツ滞在などを機に、日本の建築空間における障壁画や屏風が偶数の画面で連結していること、それに対して西洋の祭壇画は奇数の画面が連結し中心性を重視していることに気づく。

 そうした形式を自らの絵画制作の実践で検証する過程で、16世紀初めにグリューネヴァルトが描いたイーゼンハイム祭壇画の《磔刑図》を参照しつつ、《ta・KK・ei》(1998)を制作。長い歳月をかけて、障壁画に着想を得た偶数の画面が連結する横長形式の「〈TA〉系」、西洋のイコンや仏教美術などの精神性を正方形の画面に構成した「〈Qf〉系」といった作品を展開し、自身の絵画理論を深め続けてきた。

 また近年、原爆の図 丸木美術館に通いながら、「原爆の図」の存在に深い関心を寄せている母袋。そのなかで、新型コロナウイルス感染症の世界的流行が起き、現代における芸術の使命について改めて向き合いながら、再び《ta・KK・ei》の連作を描き始めた。そして現在は、原爆の図第3部《水》をもとにした新作《TA・GEMBAKZU》に取り組んている。

 本展は、2020年に再始動した《ta・KK・ei》連作と《TA・GEMBAKZU》などを中心とし、プラン・ドローイング《Himmel Bild》《ヤコブの梯子・枠窓》を展示空間に設置することで、昨今のパンデミック、核の脅威や戦争に揺らぐ世界の現実を生きる私たちと、芸術とのかかわりについて探る。