EXHIBITIONS

ジュリアン・オピー

2022.10.21 - 11.26

左:ジュリアン・オピー Dance 1 figure 1 step 2. 2022
右:ジュリアン・オピー Dance 1 figure 2 step 2. 2022
© Julian Opie / MAHO KUBOTA GALLERY

ジュリアン・オピー Dance 1 figure 1 step 2. 2022
© Julian Opie / MAHO KUBOTA GALLERY

 MAHO KUBOTA GALLERYではイギリスの現代美術を代表するアーティストのひとり、ジュリアン・オピーの個展を開催。ダンスを主題とした5点の映像作品と、8点のペインティングによる新作展となる。

 オピーは1958年ロンドン生まれ。風景や人物など、アートにおける伝統的なモチーフを、ピクトグラムやアニメの表現を連想させるシンプルな描画と色彩表現により簡略し作品化する。最小限の要素で表現するそのスタイルは、アート界のみならず広義のカルチャーシーンで大きな支持を集め続けている。

 今回の作品でテーマとするダンスは、文明が生まれる前の先史時代、人類は言語の獲得より早く、コミュニケーションの手段とした可能性があると言われている。オピーはこれまでも「歩く人」「ポーズをとる人」「走る人」「ポールダンサー」など、現代社会における人間のふるまいを主題として時代のシーンを切り取る鮮やかな作品を生み出してきた。それらの作品は現代を生きる私たちの姿を映し出しているいっぽうで、同時にこれまで人類が営んできた本質的で普遍的な行為とも結びついており、太古の昔から人々が絵画や彫刻作品として表現してきた「人間の営み」「人が生きるということ」を、私たちの時代において手に入る材料で提示するという試みでもあった。

 オピーが過去に主題としたポールダンサーのダンスは独特の目的と様式を持つ完成されたダンスであるのに対し、今回、ペインティングとLEDディスプレイによる映像作品として表現する若い男女のダンサーの姿は、新しいルールによって展開されていく発展途上のダンスのようにも見える。これらのダンスはTikTokで投稿される「シャッフル」の群舞であり、通常はかなり早めのスピードでみなが同じステップを繰り返し、ダンサー同士のシンクロ感を生み出していくものだという。

 LEDのディスプレイによって二次元的に展開されるダンスの動きはしばらく見つめていると、まさに生きている人の動きそのもののように思えてくる。オピーの過去の作品と同様に、その動きの細部にモデル一人ひとりの個性だけでなく、態度や生き様、個々の気配が見てとれることにより、各々の姿は突如として私たちが日々暮らすこの地球の、現在を代表する生き生きとした群像となり、時代を映し出すランドスケープともなっている。

 なお本展と同時期に、PARCO MUSEUM TOKYOでは、オピーのVR作品を初公開する個展「OP.VR@PARCO」(10月21日~11月14日)が開催。VRルーム内でゴーグルを装着し、ダイナミックな展示を体験できる(完全予約制。詳細はhttps://art.parco.jp/museumtokyoへ)