EXHIBITIONS

倉田裕也「Summer Hours」

The Mass
2022.08.27 - 09.25

倉田裕也 Bridge Fishing 2 2022

倉田裕也 Wild thing 2022

倉田裕也 Into the Creek 2022

 倉田裕也の日本では約3年ぶりとなる個展「Summer Hours」が、The Massで開催されている。本展では、新作のキャンバス作品18点を展示。

 倉田は1980年大阪府生まれ。2003年にパーソンズ美術大学を卒業し、ニューヨークを拠点に制作を行う。その傍らで、2007年から15年間、絵画修復のスタジオで様々な絵画技法を取得しながら働いてきた。身近な日常の風景を描く倉田の作品は、その素朴な光や一瞬の光景、言葉では例えられない内面的な感情を絵画に浸透させ、「いましか描けないもの」を表現している。

 パンデミック以降、自然のなかで家族と過ごす時間が多くなったという倉田。身近な景色を被写体とし自身が撮影をした写真をベースにドローイングを描き起こし、以前のフリーハンドで描くスタイルから徐々に変化を遂げ、キャンバスに落とし込む現在の表現にたどり着いた。色彩豊かな表現は、一見水彩画やクレパス画のようにも見受けられる。油彩による丁寧な筆のタッチと日常生活の様々な場面からインスピレーションを受け描く構図はときにマンガ的であり、馴染みのある風景と融合させ、倉田自身のニューヨークでの生活を投影しながら、日記を綴るように描いている。

 展覧会タイトル「Summer Hours」という言葉の通り、本展で展示される作品では、夏の明るく眩しいほどの陽の光や、大きな木々から降り注ぐ木漏れ日、はしゃぐ子供たちが描かれ、水面に映る景色は高く広がる空をも反射させ、満月の月明かりは柔らかくあたり一面を照らしている。また倉田の作品は、あえて登場する人物たちの表情を単純化するという、デフォルメを用いたその自由な描写によってより馴染み深く、キャンバス一面に広がるユーモラスな絵画世界へ見る者を誘う。