EXHIBITIONS

レオノール・アントゥネス「the homemaker and her domain, IV」

レオノール・アントゥネス the homemaker and her domain / In conjunction with Festival d’Automne à Paris
installation view at Villa André Bloc, 2021
Photo by Nick Ash © Leonor Antunes Courtesy of the artist, Festival d’Automne à Paris and Taka Ishii Gallery

レオノール・アントゥネス the homemaker and her domain / In conjunction with Festival d’Automne à Paris
installation view at Beaux-Arts de Paris, 2021
Photo by Nick Ash © Leonor Antunes Courtesy of the artist, Festival d’Automne à Paris and Taka Ishii Gallery

 タカ・イシイギャラリーでは、ポルトガル人アーティスト、レオノール・アントゥネスの個展「the homemaker and her domain, IV」が開催される。

 アントゥネスは1972年生まれ、リスボン出身。リスボン大学美術学科にて学士号(視覚芸術、彫刻)を取得後、ドイツのカールスルーエ州立美術アカデミーで学ぶ。現在はベルリンを拠点に活動。世界各地での個展開催や、国際展にも多数招かれ、日本では国際芸術祭「あいち2022」(~10月10日)に参加中だ。

 タカ・イシイギャラリーでの初個展、また国際芸術祭「あいち2022」で出品されるのは、ともに「主婦とその領分」の作品だ。セラミックのインスタレーション「間接照明、グループ2」と、「シャルロット」シリーズの作品、そして新作の「道子」「道子2」によって、アントゥネスはホワイトキューブ空間を、とある主婦の領域へとつくり変える。愛知での芸術祭と本展をあわせて鑑賞することで、パリで始まった作品シリーズの全体像が明らかになるという。

「シャルロット」と「道子」はそれぞれタイトルの通り、デザイナーのシャルロット・ペリアン(1903〜99)と山脇道子(1910〜2000)の生涯に影響を受けた立体作品。アントゥネスは、例えばテキスタイルのパターンなど、2人のデザインを根本的な手がかりとして、多次元の文脈を備えた立体のシリーズを発展させてきた。

 ドイツのパリ占領の時期に、商工省の工芸指導顧問として来日したペリアンと、夫・山脇巌のバウハウス留学のため、ともにドイツに移住し自身もバウハウスで学んだ山脇道子。日本とヨーロッパに深く関わり、異国の地で「ロスト・イン・トランスレーション」のような期間を経験した2人のデザイナーの作品と人生、そして各々のアートについての誤解や誤伝が、アントゥネスの制作にとって重要な指針となっている。

 世界中のものづくりの技法を活用し、ロープや皮革、コルク、木材、真鍮やゴムなどを使いながら、独自のフォルムを生み出すアントゥネス。その稀有な作品空間を体験することは、私たちに歴史や建築、そしてアートを様々な観点からとらえ直すきっかけとなるだろう。