EXHIBITIONS

リアル(写実)のゆくえ

高橋由一、岸田劉生、そして現代につなぐもの

2017.04.15 - 06.11

岸田劉生 麗子肖像(麗子五歳之像) 1918 東京国立近代美術館蔵

長谷川潾二郎 猫 1966 宮城県美術館蔵

犬塚勉 林の方へ 1985 個人蔵

 江戸時代から徐々に招来された西洋画は、その科学的な写実技法が伝統的な日本の絵画と大きく異なり、当時の人々に衝撃を与えた。高橋由一は西洋の石版画と邂逅し、その迫真の描写に感動して洋画家を志すなど、彼らにとって「写実」とは、自然や身近なものなど外界に対する清新な感動を伝える手立てとして機能した。

 さらに大正期、岸田劉生は北方ルネサンスの巨匠たちの「クラシックの美」をめざし卓抜した描写力で写実を極めた。それは現実を超え出る写実であり「内なる美」の表出として高く評価されている。劉生および彼の率いる草土社は同時代の青年画家たちに大きな影響を与えた。

 その後、写実絵画は時代の変遷とともに様々な役割を担い、写実という概念そのものも時代の思潮により変化をきたした。それは西洋由来の写実をいかに消化し己のものにするかという意識の表れだともいえるだろう。

 本展は、移入され150年を経た写実がどのように変化し、また変化しなかったのか、日本独自の写実とは何かを作品により検証し、明治から現代までの絵画における写実のゆくえを追う。