詩・季・彩 ―石井康治 四季を詩う彩りのガラス

　ガラス作家・石井康治（いしい・こうじ、1946〜96）の初の本格的な回顧展「詩・季・彩 ―石井康治 四季を詩う彩りのガラス」が、青森県立美術館で開催されている。

　千葉県に生まれた石井は、青森県の自然に魅せられ、北国の光と風が織りなす四季を彩り豊かなガラス作品にうつし取り、ガラス工芸に新たな息吹を吹き込んだ作家だ。東京藝術大学美術学部工芸科鍛金専攻で学び、卒業後、ガラスビンを製造する東洋ガラス株式会社に就職して製品デザインを担当したいっぽう、自身でもガラス作品の制作を始めると、72年に日本ガラス工芸協会会員となり、77年からは退社して創作活動に専念した。

　91年、青森市郊外の三内丸山に念願のアトリエ「石井グラススタジオ青森工房」を開設。青森の四季折々の美しい表情を作品にとどめようと探求を重ね、「彩烈文（さいれつもん）」「彩花文（さいかもん）」「環象文（かんしょうもん）」など、独創的な文様技法を次々と考案していった。そして95年に自身の創作におけるひとつの到達点と自負する四季の「樹映（じゅえい）」シリーズを生み出し、翌年11月に青森で急逝した。

　本展では、青森を制作の地に選び、その自然風土を、鮮やかで繊細な色彩と流麗で端正な造形による作品へと昇華させた、石井の創作活動の軌跡を紹介している。