EXHIBITIONS

都美セレクション グループ展 2022

たえて日本画のなかりせば:東京都美術館篇

楊斎延一 内国勧業博覧会 上野公園一覧 1890

山下和也 上野恩賜公園出開帳霊場巡り物見遊山(巡礼代行編) 2021 写真=西澤諭志 参考作品

歩火 移動式展示場+スーツケース型直写台 2021 写真=吉江淳 参考作品

親指姫 なまず公園 2021 写真=吉江淳

山本雄教 Blue mountain 2021 参考作品

多田さやか BIRTHDAY 2021 参考作品

「都美セレクション グループ展」は、東京都美術館のリニューアルオープンを機に2012年にスタートした展覧会シリーズ。新しい発想によるアートのつくり手の支援を目的として、同館の展示空間だからこそ可能となる表現に挑むグループを募り、その企画を実施してきた。

 今年は、応募のなかから厳正な審査を経て選ばれた3グループが展覧会を実施し、絵画、立体、映像、インスタレーションなど様々なジャンルの作品を展示する。

 ギャラリーAでは、パラレルモダンワークショップによる展覧会「たえて日本画のなかりせば:東京都美術館篇」が開催される。

 パラレルモダンワークショップ(P.M.W.)は2021年4月に結成。近代(modern)の並行世界(parallel)への想像力を通し、近代化を経た現代のとらえ直しを試みる思考実験を行う研究会(workshop)だ。​日本の近代における「ありえたかもしれない並行世界」を、主に美術の側面から設定し、その設定に基づいたフィールドワーク・トークイベント・展覧会などを行うことで、現在の私(たち)の表現・歴史・制度を再考する。

 小金沢智がキュレーションを手がける本展は、2021年に上野恩賜公園内にて情報非公開のゲリラ的な活動として行った「たえて日本画のなかりせば:上野恩賜公園篇」に続くものであり、楊斎延一の錦絵《内国勧業博覧会 上野公園一覧》を起点としたもの。泉桐子、大平由香理、尾花賢一、金子富之、金子朋樹、菊地匠、硬軟、春原直人、多田さやか、谷保玲奈、ちやのある Le Cha noir(山下和也)、⻑沢明、中村ケンゴ、丹羽優太、ベリーマキコ、歩火、山本雄教の17組19名が参加し、展覧会に向けて早朝より夕刻まで、上野恩賜公園内でアクションを実施した。

 各自のアクションは全体として「パラレルであること」を重視し、メンバー間ですら事前のプランを共有されないまま行われ、一連のアクションは、3名の写真家、鈴木一成、西澤諭志、吉江淳によるスチル写真撮影、そして4名の映像作家、岡安賢一、國友勇吾、笹谷遼平、島田隆一の映像撮影によってドキュメントされた。映像は、本展会場にて全編公開、写真は、会期中の6月18日に発売予定の記録集(限定300部)にて公開される予定である。

 今回の「たえて日本画のなかりせば:東京都美術館篇」は、上野恩賜公園篇の17組の行動・実践をベースとして展覧会として新たにつくり上げられるもので、鑑賞者に対して「パラレルな世界」の提案が行われる。錦絵《内国勧業博覧会 上野公園一覧》が描かれてから132年後に、上野恩賜公園に位置する東京都美術館で、「現在の美術家たちが黎明期における日本画の不在を仮想したときどう振る舞うか、という大いなる矛盾を含んだ思考実験」になるという。

 なお会期中の6月18日には、パラレルモダンワークショップのメンバーが、解説・上映会・ディスカッションなどで「たえて日本画のなかりせば:東京都美術館篇」の全貌を案内するイベントも予定している。

 なお、東京都美術館では現在「都美セレクション グループ展 2023」の企画を公募している。応募締切は2022年7月8日(当日消印有効)。