EXHIBITIONS

田島美加「スペクトラル」

2022.05.21 - 06.18

田島美加 Anima 27 2022
Photo by Charles Benton ©︎ Mika Tajima Courtesy of TARO NASU

 田島美加の個展「Spectral」が開催。TARO NASUでは約4年ぶりの個展となる。

 田島は1975年ロサンゼルス生まれ。現在、ニューヨークを拠点に活動するアーティスト。彫刻、建築、音楽、パフォーマンスなど多様な要素を組み合わせた作品で知られる。日本では「六本木クロッシング2013:アウト・オブ・ダウト」展などに参加。モダニズム建築の巨匠ル・コルビュジエの作品を自身の作品と組み合わせたインスタレーションなどで高い評価を得る。

 本展では、ジャカード織のペインティング「Negative Entropy」シリーズと、アクリル板に着彩した「Art d’Ameublement」シリーズという、田島の代表的な2シリーズを展示。加えて、新しい試みであるガラスの立体作品「Anima」シリーズ、そして2019年の岡山芸術交流で発表した「動く立体」ともいえる「New Humans」が並ぶ。

 本展に冠した「Spectral(スペクトラル)」は幽霊のような、という意味とともに、光学・物理学の用語として、分光器を通して眺める虹のような光の分布図を示すこともあれば、元素や原子を対象物とする特定の分布図を示すこともある、という多義的な言葉だ。原義や翻訳語の成立過程も多様なこの言葉は、田島の新作の本質を伝えている。

 色彩の刺激がよびさます感情を扱う「Art d’Ameublement」や、呼吸という可視化できない対象を造形化した「Anima」は、いずれも鑑賞者の見る角度や展示室内の光によって大きくその表情を変える、つかみどころのない存在だ。

 また黒い磁性流体がアルゴリズムによって動き続ける「New Humans」は、新種の生命体を実験用のシャーレのなかで覗き込むような不思議な視覚体験を提示する。これらの、時にかすかな、しかしたゆむことなくうつろい続けるイメージは、物体ではなく現象としてのアートにより強い関心を寄せる田島の作品世界の特徴を示すものであり、作家の今後の展開を予見させるものともいえる。

 なお田島は現在「太宰府天満宮アートプログラム vol.11」に参加中。太宰府天満宮 宝物殿および境内にて「Appear」展(~10月10日)が開催されている。