Vol.75 No.1096
2023年1月号 特集「鴻池朋子」
足元へ降り立つ「みる誕生」
場所や天候を巻き込んだサイトスペシフィックな作品や活動を各地で展開し、芸術の根源的問い直しを続けている鴻池朋子。今夏、高松からスタートし、静岡へリレーしてきた鴻池朋子の個展タイトル「みる誕生」。あまり見慣れない字面だ。手で書いてみる。なめらかに一筆で書ける「る」と複雑で画数の多い「誕」のあいだの飛躍につんのめる。試しに声に出してみる。匂いはあるか、味はどうだろう? このなにやら物質的な手応えのある言葉は、様々な素材、地形や気象、ひとびとと出会い、ものづくりを通して遊んできた作家がいま降り立つ、開けた場所なのかもしれない。この特集では、観客の私たちもそこに一緒に向かってみたい。
