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安藤忠雄

Tadao Ando

 安藤忠雄は1941年大阪府生まれ。プロボクサーを経て独学で建築を学ぶ。その間、アメリカやヨーロッパを旅してアイディアを肥やし、69年に安藤忠雄建築研究所を設立。79年に《住吉の長屋》で日本建築学会賞を受賞。間口2間、奥行8間の手狭な長屋の敷地のおよそ3分の1を、自然を引き込む中庭を核として改築し、機能面を最低限に突き詰めたコンクリート住宅で注目される。以来、打ちっ放しのコンクリートと幾何学的造形、自然と調和する建築作品で知られ、85年にはアルヴァ・アアルト賞を受賞。89年竣工の《光の教会》では、装飾のないコンクリートの壁に十字の切り込みを入れ、正面に外光による「光の十字架」が差し込む神聖な礼拝堂をつくり上げた。六甲の《風の教会》(1986)、北海道にある《水の教会》(1988)の2棟とあわせて「教会三部作」とも呼ばれている。

 80年代後半、瀬戸内海・直島の自然を再生させるアートプロジェクトの一環として《ベネッセハウス ミュージアム》を設計。「自然・建築・アートの共生」をコンセプトに、離島の海景のなかに広がる「境界のない」建築を構想し、美術館とホテルが一体となった施設として92年に竣工された。95年、プリツカー賞を受賞。2000年代の主なプロジェクトに、《ピュリッツアー美術館》(2001)、《地中美術館》(2004)、《表参道ヒルズ》(2006)、《21_21 DESIGN SIGHT》(2007)など。国外では、フランソワ・ピノーからの依頼を受けて、17世紀ヴェネチアの旧税関を現代美術館に生まれ変わらせた《プンタ・デラ・ドガーナ》(2009) などを手がけている。

 建築の分野を超えて社会活動にも積極的に取り組んでおり、「阪神・淡路震災復興支援10年委員会」実行委員長として被災地の復興に尽力。04年、「美しいまち・大阪」に賛同し、大川・中之島一帯を中心に桜を植樹する「桜の会・平成の通り抜け」を呼びかける。また、07年より東京湾の埋立地を森にする「海の森」募金の事業委員長を務めるほか、11年に東日本大震災復興構想会議議長代理として、遺児育英資金「桃・柿育英会」を設立し、被災地の子供たちを支援してきた(「桃・柿育英会」は2020年6月に寄付金の募集・受け入れを終了)。

 17年に東京で初の大規模個展「安藤忠雄展―挑戦―」が開催。模型やスケッチなどの設計資料とともに、代表作《光の教会》やアトリエが再現展示され、建築から社会活動まで、安藤の仕事を包括的に展観する内容であった。19年、兵庫県立美術館内にAndo Galleryが開館。受賞歴に、イサム・ノグチ賞(2016)、イタリア共和国功労勲章 グランデ・ウフィチャ―レ(2015)、フランス芸術文化勲章 コマンドゥール(2013)、ジョン・F・ケネディーセンター芸術金賞(2010)、後藤新平賞(2010)、文化勲章(2010)ほか多数。