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豊海健太

Kenta Toyoumi

 豊海健太は1988年大阪府生まれ。金沢美術工芸大学大学院漆コース在籍中の2014年にギャルリー東京ユマニテにて初個展「いつか」を開催。翌年の個展「界」では全長5.4メートルの組作品を発表、漆パネルの半分は漆黒の鏡のように展示空間を映し、もう半分には緻密に描かれた空想世界が広がり、現実と非現実の境界を問う作品が注目を集めた。18年に金沢美術工芸大学大学院博士後期課程漆芸分野を修了、博士(芸術)取得。

 漆芸技法を用いた平面表現を主題とする豊海は、金銀、螺鈿、卵殻等による加飾と、蒔絵や変り塗りといった伝統技法を用いた作品を展開する。なかでも卵殻技法を用いた作品は評価が高く、21年の岐阜県美術館の企画展「素材転生―Beyond the Material」にも出品された。漆黒の画面に白く浮かび上がるイメージは、点描のように細かく砕かれた卵の殻によって描かれ、鏡面に磨かれた画面に鑑賞者が映り込むことで、作品と一体化するような感覚が引き起こされる。

 主な個展に、「世界の音が、すべて消える時」(ギャルリー東京ユマニテ、2021)、「幽宴―継承する漆の骨―」(館・游彩、東京、2020)、「細胞化する漆」(アートベース石引、石川、2017)、「アダムはリンゴが嫌いだった」(morgenrot、東京、2016)などがある。