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久村卓

Taku Hisamura

 久村卓は1977年東京都生まれ。2001年多摩美術大学美術学部彫刻学科卒業。人に意識されにくい壁・床・天井・台座などを「あってないようなもの」と呼び、それらに手を加えて環境に潜ませたときに生じる、身体的経験の変容をもたらすことを重視した作品を制作している。これまでに、ギャラリーの壁を切ってテーブルをつくり、木板を再び壁に戻した《Table or Wall》(2010)、椅子の脚の一部を彫り、彫刻という造形行為と家具の機能の消失とを共存させる「Balance」シリーズ(2011〜)、衣服についているロゴに刺繍を施して彫刻に仕立てる「PLUS」シリーズ(2014〜)などを発表。美術の制度そのものを作品化することもあれば、せっけんや服といった身近にあるものに関心を寄せ、その性質や機能を保持する作品など、時々の環境に応じて作品形態を変化させている。

 近年の個展に「リピート再生」(NADiff a/p/a/r/t、東京、2020)、展覧会・グループ展に「2o2oAppropriation」(Sansiao Gallery、東京、2020)、「虚構のはずれ On the Verge of Fiction」(國立臺北藝術大學關渡美術館、台北、2019)、「道後オンセナート2018」(松山)など。パブリック・アートに、横浜市歴史博物館で発見した資料を木箱に収めて建てた《都筑歴史博物館》(2009)などがある。