有識者が選ぶ2023年の展覧会ベスト3:岩井美恵子(国立工芸館工芸課長)

数多く開催された2023年の展覧会のなかから、有識者にそれぞれもっとも印象に残った、あるいは重要だと思う展覧会を3つ選んでもらった。今回は国立工芸館工芸課長・岩井美恵子のテキストをお届けする。

文=岩井美恵子

「GO FOR KOGEI 2023」の樂翠亭美術館 展示風景より、桑田卓郎《美濃焼》(2023) 撮影=中島良平
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「走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代」展(京都国立近代美術館/7月19日〜9月24日)

展示風景より、八木一夫《ザムザ氏の散歩》(1954、京都国立近代美術館蔵)

 陶芸に限らず、日本の近代美術に関心のある人ならその名を知らぬ者はいないカリスマ・八木一夫を中心とした走泥社同人の仕事を再考するという展覧会。前衛と言われた走泥社の活動について数十年にわたり喧伝されてきたのは、「土の生理に従う」ことや「土の造形のプロセス」といった点が中心であった。しかし本展において、いずれの時代でも新しいことに挑戦してきたことが彼らの特筆すべき点なのだと明確に示された。前衛芸術とは、名声を得たのちもその場に留まるのではなく新たな表現を切り拓いていくものだと改めて認識させられた。

「河本五郎-反骨の陶芸」展(菊池寛実記念 智美術館/4月22日〜8月20日)