現代美術コレクターへの道:アートコレクターの額装事情(前編)

アートコレクターとして、現代美術のコレクションを行ううえでの基礎的な知識やルール、知っておいた方が良い豆知識などをお届けするシリーズ企画。アートコレクター・コバヤシマヒロが案内する。

文=コバヤシマヒロ

(c) photo AC
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 今回は、意外に詳細を語られることが少ない「購入作品の額装」について、アートコレクター25名にアンケートをとり、ご意見や質問をいただきました。

  そもそも作品の額装はすべきなのでしょうか。アートコレクターのなかには、一度も額装をしたことがないという方もいらっしゃいます。アンケートでは25人中23人が「額装の経験がある」と答えていますが、コレクションしている作品のうち、額装している作品は「20パーセント以内」と答えた人が約半数の11名となりました。

額装の有無の判断基準は?

  そこで気になるのは、みなさんの額装する作品と額装しない作品の判断基準です。額装する作品の基準や考えを聞いたところ、次のような意見が集まりました。

  • マチエールが繊細な作品

  • 家の動線等で表面保護が必要なもの

  • 表面に凹凸のある作品

  • 表面がテカテカした作品(埃が目立つ為)

 こうした額装経験者の声からは、作品保護の観点から額装の要不要を判断していることがうかがえます。

油彩作品の額装例 提供=ゆとりーマン

 いっぽうで、作品のジャンルや支持体によって判断する向きもあるようです。

  • 日本画は保管保存の点で必ず額装する

  • 油彩で厚塗りのもの

  • シルクスクリーン、リトグラフ、写真作品は折れたりするリスクがあるため額装する

  • 写真やドローイングなど

  • ドローイングなど紙を支持体にした作品や、写真作品は必ず額装する

 支持体が紙の場合は額装する、という回答が目立ちます。いくら展示環境がしっかりしていても、紙はどうしても支持体の材質が弱く曲がったり折れたりする可能性が高いため、必ず額装するコレクターが多いようです。

紙のドローイング作品の額装例 提供=吉田昌哉

 また「ドローイングは、額装したほうが圧倒的に作品としてアップするので、できるだけ額装します」という声もあるように、厚さがない作品は額装することで存在感を増し、作品の魅力向上にもつながります。また、岩絵具を使う日本画は色が飛びやすいため、額装して保護する必要があるといえるでしょう。

 油彩でも、絵具が厚く盛られている場合は、絵具が乾燥していなかったり、埃が溜まりやすいなど、作品のダメージが心配されるケースがあります。そうした場合は、アクリルボックスなどに入れて額装することをお勧めします。

 反対に、「この作品は額装しない」「額装できない」という場合の理由については、以下のような答えが集まりました。

  • キャンバスは基本額装はしない。理由として木枠にネジ穴が空いてしまうことと、作品の魅力が伝えにくくなってしまうため

  • 油彩画などアクリル額装になる場合、高額なので額装しない

  • 油彩画に関して、マチエールをより近くで感じたいため額装しない

  • 額のアクリルが入ることで、本来の作品の見え方に影響がありそうなものはなるべく額装したくない

  • 飾っている(ほかの)キャンバス作品と相談して決める

 油彩をはじめとするキャンバス作品は、額装せずそのまま飾るというコレクターが多いという結果になりました。「作品の魅力を損なわない為」といった考えは、作品を愛するコレクターならではの視点ではないでしょうか。

 作品保護を考えることはもちろん重要ですが、「飾っているキャンバス作品と相談して決める」と答えたコレクターもいるように全体のバランスを考慮したうえで「作品の魅力をより引き出すためには」という観点で、額装すべきかどうかを考えるのもおもしろいのではないでしょうか。

 また、重量を懸念して額装をしないという意見もありました。

  • 巨大すぎる作品は額装すると壁が重量に耐えられない心配があるので額装していない

  • 重量が重くなり、かえって危険な気もする

 ギャラリーなど、展示に特化した高い強度の壁づくりがされていない自宅空間では、重量も重要なポイントとなります。重量は心配なものの保護の観点から額装したい、というコレクターのなかには、壁にかけるのではなく床置きで楽しんでいる方もいます。

床置による作品展示例 提供=柵木頼人