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島民でつくりあげる展覧会。文化庁メディア芸術祭が石垣島に巡回

毎年優れたメディア・アートやマンガなどのコンテンツを表彰・展示する「文化庁メディア芸術祭」が、離島初となる石垣島で開催された。これまで多く巡回されてきた都市圏とは異なる、その特徴を紹介する。

まちなか交流館 ゆんたく家の1階には、メディア芸術祭短編優秀作品を鑑賞しながら市民がくつろげるスペースが用意されている

 近年、石垣島は国際化が進んでいる。2013年に新石垣空港が開港し、本土からのアクセスを容易にするLCCや、台湾・桃園と石垣島をつなぐチャイナ・エアライン、香港とつなぐ香港エクスプレスが就航。亜熱帯気候固有の自然やマリン・スポーツを中心とするアクティビティなどの強力な観光資源を持つ石垣島は、インバウンドを含めた観光客の誘致に成功し、市街地にも洒落たセレクトショップや土産物屋が多く見られるようになった。

 だがいっぽうで、若者の島離れは深刻だ。大学機関のない石垣島では、高校を卒業した学生の多くが進学のために島を離れてしまう。「若者が大学卒業後にUターンしたくなるような未来像を描くために、また、観光資源を活かしさらなる魅力を開発するために、クリエイティビティが島に求められている」と、製作ディレクターの岡田智博は語る。文化や芸術との接点を増やすことで、島民の生活をより豊かにすることが期待されている。

 「文化庁メディア芸術祭石垣島展」は、上記のような状況のなかで観光誘致による地域活性だけでなく、島民自身に新たな島の魅力を発見してもらうために、開催されている。

 メイン会場となるのは、前川國男の設計による石垣市民会館(1985年)だ。2階のロビースペースに、anno lab、池内啓人、クワウボリョウタ、児玉幸子、scope+橋本典久、徳井綾、nuuo、堀尾寛太の作品が展示。島に生息する昆虫や星空など、石垣島にまつわるモチーフの作品が選出されている。また、展示造形を担当したデザイナーの長岡勉は、島の高校生と協働でブースや休憩用のベンチを製作。アーティストが行き来する芸術祭の現場に、若者がふれる機会を創出した。

 市民会館が位置する市街地周辺にはほかにも、チームラボ《百年海図巻[上映時間:100年]》やクワクボリョウタ《10番目の感傷(点・線・面)》、Pokémon GO《“リアル”ポケストップ》が展示されている。

 市街地から離れた伊原間会場には、新たにできたオルタナティブ・スペースに落合陽一の《コロイドディスプレイ》を展示。観光地化されていない同地域に展示することで、地元住民や本芸術祭をきっかけに集まった地域おこし協力隊らによる、中長期的な交流・開発を狙う。

 また、メディア芸術祭と同期間には、クリエイターやアーティストが展示や販売、イベントなど様々な活動を行う「やえやまアートホッピング」が開催。市街地のショップやホテルなどで、クリエイティビティを満喫することができる。

 外来の作品を展示するだけではなく島民自身の芸術祭づくりによって、創造性の向上を試みた石垣島展。この芸術祭が、今後どのように芽吹いていくのかが期待される。

編集部

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