春画の暗黒時代と夜明け
しかし明治時代以降、近代化推進のなか西洋的な倫理観が流入すると、春画はタブーとされ、基本的に公開はおろか、所持することも秘すべきものとして、長らく浮世絵の表歴史から除外されてきた。
在ることは周知ながら、見られない浮世絵春画に大きな転機をもたらしたのは、明治初期に浮世絵そのものの価値を逆輸入のかたちで示唆したのと同様に、西欧の美術館だ。2013年から14年にかけてロンドンの大英博物館で開催された展覧会「春画 日本美術の性とたのしみ (Shunga sex and pleasure in Japanese art)」展」は、女性たちにも好意的に受け止められ、春画の芸術性とユーモアのある表現が高く評価されて話題になった。これを受けて、日本で初めての本格的な春画展が、2015年から16年に東京の永青文庫と京都の細見美術館で開催されたことは記憶にも新しいだろう。
こうして春画をめぐる環境は動き出す。研究者のみならず一般の人々の関心も高まり、絵師の活動のひとつとしてとらえられ、時には展覧会でもコーナーが設けられて他の浮世絵とともに並べられたり、春画をテーマにした映画や書籍も発表されるようになった。