11月3日、八戸市美術館が全面リニューアルを経てついに開館した。
設計は、西澤徹夫建築事務所・タカバンスタジオ設計共同体。美術館のシンボルともいえる天井高17メートル、広さ約800平米の「ジャイアントルーム」を中心に、展覧会を行う「ホワイトキューブ」や「コレクションラボ」、映像作品の展示に最適な「ブラックキューブ」、アーティストが創作活動を行える「アトリエ」など、大小様々な展示室を備えている。
館長は、同美術館のプロポーザル審査副委員長も務めた佐藤慎也(日本大学理工学部建築学科教授、建築家)。オープニングレセプションで佐藤は、「従来の美術館のもつ収集、保存、展示、研究といった機能に、創造、対話といった機能を加え、これからの美術館の考え方を示していく」と話した。
2022年2月20日までは、開館記念展の「ギフト、ギフト、」を開催。吉川由美(アートプロデューサー、八戸市新美術館運営検討委員会委員、八戸市新美術館建設工事設計者選定プロポーザル審査委員会委員)がディレクターを務め、11組のアーティスト・コレクションが参加。八戸の祭り「八戸三社大祭」を出発点とし、「ギフト」の精神に向き合う展示となる。
会場は4部構成。1章「祭りをめぐるもの」では、八戸市在住の切り絵作家・大西幹夫による祭りの歴史をテーマにした切り絵作品や、写真家・浅田政志の今の時代における祭りをとらえた写真が展示される。
2章「風流という精神」では、「かざる」という創造行為に着目し、陶芸家・桝本佳子は八戸から着想を得た壺や皿を、写真家の田附勝は八戸が発祥ともいわれるデコトラを撮影した新作を発表。
3章「受け取ること」では、「ギフト」になるかどうかは受け手のとらえ方次第であることを表す。現代芸術家の江頭誠は、八戸三社大祭の山車彫刻と、市民から集められた毛布でインスタレーションを制作。建築チームの西澤徹夫・浅子佳英・森純平は、八戸の祭りや文化、人、場所などの相関関係を視覚化した。
ドキュメンタリー映画監督の大澤未来は山車祭りと疫病の歴史に焦点を当てた映像作品を流す。また、八戸クリニック街かどミュージアム蔵の浮世絵は、会期中にテーマを変えながら展示替えも行うという。
4章「現代社会のなかの“ギフト”」では、ギフトのあやうさや、現代社会に生きる我々に矛盾を突きつける作品が並ぶ。田村友一郎は、デパートの売り場をイメージしたインスタレーションと、プレゼントを注文して届くまでの映像を制作。KOSUGE1-16は、インバウンドにおける文化消費について問いかける。
このほか、オランダ・アムステルダム在住のアーティスト向井山朋子は「ジャイアントルーム」で市民らと制作したパフォーマンス(11月14日に開催)を映像化し、来年1月頃までに公開予定だ。