東京・南青山のMA5 Galleryで、デザインコレクティヴ・MULTISTANDARDの展覧会"JUNCTION"が開催される。会期は8月19日〜9月10日。
MULTISTANDARDは2020年の結成から4年目を迎えるデザインコレクティヴで、秋山亮太、シン・スダンリー、田渡大貴、松下陽亮、古舘壮真の5人が参加している。ミラノデザインウィークをはじめ、RIMOWAの世界巡回展"AS SEEN BY"など、国内外問わず実験的なアプローチでプロジェクトに参加してきた。
社会が求める最適解を提示するのではなく、新しい視点をツールとして機能させ、アイデアに形を与えることを主眼として活動してきたMULTISTANDARD。多くの人々と定説的なスタンダードの実像を共有することよりも、多視点な議論を促進させ、知見の限界を押し広げることを重視しており、マテリアルやプロセス、コンテクストを見つめ直し、デザインの手がかりを模索し続けている。
"JUNCTION"は、これまでメンバーに共通するビジョンと、その具現化を活動の中心に据え制作をおこなってきたMULTISTANDARDが、その外側に位置する個々のビジョンに焦点を当てた展覧会となる。5人独自のクリエイションも交え、より具体的にMULTISTANDARDのビジョンを体現できる機会を目指す。
栃木県益子町を拠点に活動する秋山は、手から生まれる感覚を大切にしつつ、素材や時代背景のリサーチをもとに表現を模索してきた。本展では人工物でできた素材を使い、その可能性を模索した壁掛け作品のほか、照明など2〜3点を展示。
1988年台湾生まれ、現在は東京で活動をするシン・スダンリーは、人と作品との関係をつねに思考し続けてきた。今回は、継続して取り組んでいる素材研究の中から、自在に膨張する発泡ウレタンの特性に着目した家具を提示する。
物質を取り巻く性質や環境を多角的に観察することで、「もの」の新たな意味合いや機能の掘り起こしを模索する田渡は、1ミリメートルにも見たない化学繊維や、一見無価値な流木を素材として扱った立体作品を出展する。
実験的なプロセスを通じて、あらゆる製品、空間、素材に対する固定概念を更新できるデザインの可能性を思考する松下。メラミンスポンジに樹脂を流し込むことで制作した容器を展示する。
古舘は空間に内在するあらゆる関係性に着目し、独自のアプローチでデザインやアートワークを行ってきた。本展では「不均質なプラスチック」と、「木の複製」が同居する立体作品を展示する。
そして、MULTISTANDARDとしては、スツールの「chopping」と壁掛け作品「oozing for RIMOWA」を出品する。「chopping」は従来の木材加工プロセスに薪割りの手法を加えることで完成する、国産木材の価値を再考するスツールだ。
「oozing for RIMOWA」は、素材として認識されていない「接着剤」の価値転換に焦点を当てる。スーツケースで著名なRIMOWA社のアルミシートを「接着剤を装飾として変換する型」として解釈した作品だ。
デザインをするという行為の概念について考え続けるMULTISTANDARDが提示する、多彩な視点をぜひ会場で目撃してもらいたい。