デザインとアートを通して、日本の新たな価値や感性を世界へと発信してきた東京ミッドタウン。同所には、清水敏男とジャン=ユベール・マルタンがプロデュースした、国内外の作家によるパブリックアート作品が19点展示されている。
そしてこの場所に、パブリックアート恒久設置コンペ「The Best of the Best TMA Art Awards」によって選ばれた石山和広の作品が20点目のパブリックアートとして新たに加わることが決定。3月29日、作品の除幕式が行われた。
石山は1981年山形県生まれ。2008年東京藝術大学大学院美術研究科先端藝術表現専攻修了。絵の歴史をバックグラウンドに、写真を用いた平面作品の制作を行うアーティストだだ。近年の展示として「秀桜基金留学賞10年、そして「今」2006~2015」(岡山県立美術館、2019)、ヴェネチアビエンナーレ国際建築展2016(増田信吾+大坪克亘との協働)。主な受賞に、2018年「The Best of the Best TMA Art Awards」グランプリ受賞、2012年「PX3」Honorable Mention受賞などがある。
新たに東京ミッドタウンのパブリックアートとなる《絵画からはなれて[磊](らい)》のコンセプトは「庭における『石』の象徴」。文化の形成に山の存在が深く関わってきた日本と、日本の庭園における石=山のメタファーであることを前提に、岩肌がむき出しとなった山=石と見立てた平面作品だ。
石山は今回のパブリックアート設置に際して、次のように喜びを語る。「まずは、スタッフの方々や家族に感謝します。2006年、アーティストのビル・ヴィオラに“いい作品をつくるためになにが大事ですか?”と聞いたとことがあるんです。すると彼はすぐさま僕の肩をつかんで揺らしながら”その気持ちが大事なんだ!”と答えました。そのときは“答えにならない答えだな“と思いましたが、いま、彼の言いたいことがわかった気がします。
作品構想、制作、プレゼン、そして受賞決定からいまの瞬間までずっと、僕はいい作品をつくりたいと思っています。そして、そういう気持ちを持ち続けられているのは、ミッドタウンをはじめサポートし続けてくれたスタッフの方々のおかげだと思っています」。
《絵画からはなれて[磊](らい)》は、たんなる1枚の写真ではなく、何枚もの写真をコンピュータ上で構成したもの。石山は「納得できるプリントの精度に至るまでスタッフのみなさんに尽力していただき、最後まで制作に集中できました」と振り返る。
今回の除幕式には審査員の中から児島やよい、清水敏男、土屋公雄、中山ダイスケ、八谷和彦が出席。児島は「この作品を毎日見ることのできる方々がうらやましい。毎日の自分を作品に重ね合わせて、いろんな風景が見えるのではないかと思う」と述べた。また中山は、「人々の待ち合わせ場所として親しまれてほしいです。また、“なぜ山か?”“(対象のすべてにピントが合っている本作の)どこに違和感にあるのか?”といった、作品に対する違和感もあり続けてほしいです」と話す。
そして、東京ミッドタウンオープン時にパブリックアートのプロデュースを行った清水は「パブリックアート設置時のテーマである“ハイブリッド・ガーデン”にぴったりと呼応する本作は一種の山水画。まったく新しい視覚体験を楽しんでほしいです」と、東京ミッドタウン準備時を振り返りながら感慨を示した。
パブリックアートとして、現在の場所に恒久展示される本作。いち早くチェックするとともに、都市における新たな「山水画」に潜む「違和感」を実際に間近で見ることで確かめてほしい。