プーシキン美術館は、ロシアの首都・モスクワにある美術館で、その開館は1912年に遡る。開館当時は「アレクサンドル3世芸術博物館」としてスタートした同館。ロシア革命後に「モスクワ美術館」の名称を経て、37年にモスクワ出身の詩人、アレクサンドル・プーシキンの没後100周年を記念して、現在の「プーシキン美術館(正式名称=A.S.プーシキン国立造形美術館)」となった。その収蔵点数は約70万点を数え、世界トップクラスの規模を誇っている。
そんな同館のコレクションの中でも、とくに知られているフランス絵画コレクションから65点の作品が来日する展覧会「プーシキン美術館展」が2018年4月から開催される。「旅するフランス風景画」をテーマに、17世紀から20世紀の風景画が集う本展では、65点中40点が日本初公開となる。
本展開催に際し、プーシキン美術館のマリーナ・ロシャク館長は「我々がなぜ日本にフランス絵画を持ってくるかというと、館内で一番レベルが高いコレクションだからです」と語る。「今回持ってくる作品はハイレベルなだけはでなく、美術史の中でも典型的と言えるもの。日本の皆様がよくご存知の印象派の画家が多く含まれていますが、『旅するフランス風景画』というテーマで、これまでとは違った見方ができるのではないかと思います」。
展示は「風景画の展開」「印象派以降の」の2部構成。「近代風景画の源流」「自然への賛美」「大都市パリの風景画」「パリ近郊ー身近な自然へのまなざし」「南へー新たな光と風景」「海を渡って/想像の風景」の全6章によってフランス近代風景画の流れを追う。
なかでもハイライトとなるのが、初来日するモネの《草上の昼食》(1866)だ。同作は、エドゥアール・マネによって描かれた同名の《草上の昼食》(1863)に刺激を受け、モネが描いたもの。絵の舞台は当時のパリで失われつつあった自然豊かな森林が広がるシャイイ=アン=ビエール。友人で画家のバジールや、のちに妻となるカミーユらをモデルに、12人の男女がくつろぐ様子が描かれている。
モネは当初、《草上の昼食》を縦4メートル×幅6メートルの大作としてサロンに出品しようとした。しかし、結果的にこの大作は提出されることなく、切り分けられ、そのうちの2つがオルセー美術館に所蔵されている。今回出品される《草上の昼食》は、この大作の下絵として描き始められながら、最終的には作品として完成されたものだと考えられている。
このほか本展には、ルノワールをはじめ、ロマン・ロラン、フランソワ・ブーシェ、カミーユ・コロー、ポール・セザンヌ、ポール・ゴーギャン、アンリ・ルソーらの作品も出品。世界屈指の美術館が誇るコレクションで、フランス風景画の変遷をたどる機会となる。
※初公開作品点数を修正しました(2月20日)