「新海誠展 『ほしのこえ』から『君の名は。』まで」は、アニメーション映画監督として数々のヒット作を生み出してきた新海誠の仕事を振り返る展覧会で、国立美術館で現役アニメーション映画監督の名を冠した展覧会はこれが史上初となる。
本展では、2002年のデビュー作『ほしのこえ』から、2016年8月に公開され国内1900万人の動員を記録した『君の名は。』までの軌跡を、絵コンテ、設定、作画、美術、映像、造形物など約1000点を通して紹介するもの。本展は「大岡信ことば館」(静岡)、小海町高原美術館(長野)からの巡回となるが、他の会場よりも約2倍広い、2000平米という会場にあわせ、展示を再構成。初公開を含む制作資料類が特別に公開される。
展示は「ほしのこえ」「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」「星を追う子ども」「言の葉の庭」「君の名は。」の6章構成。東京会場では展示に合わせてキュレトリアルチームを結成。ゲスト・コーディネーターに大分県立美術館で「『描く!』マンガ展」を手がけた池田隆代(大分県企画振興部芸術文化スポーツ振興課主幹)、ゲスト・キュレーターに想田充(アニメーション研究家)、企画アドバイザーに榎本正樹(文芸評論家)、奥井真紀子(トレンドジャーナリスト)、菅谷淳夫(美術ライター)、数土直志(ジャーナリスト)、斉藤美絵(CDWORLD編集部)を迎える。
なぜいま、「新海誠展」を国立新美術館で行うのか。本展担当学芸員の真住貴子(国立新美術館主任研究員・教育普及室長)は「2015年に当館で『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム』展を開催し、この分野には力を入れています」としながら、「『ほしのこえ』は圧倒的なクオリティであり、世界のアニメーション制作の潮目を変えたと言われている。この作品から15年の軌跡を紹介することで、これからのアニメーションがどういう発展を見せるのかを考えたい」と話す。
では、新海自身は自分の名を冠した大規模展覧会が行われることについて、どう感じているのだろうか。その問いかけに対し、新海は次のように語った。「すごく光栄であると同時に戸惑いがあります。アニメーションは集団制作であり、多くのものはスタッフが書いてくれた共同制作の結果なんですね。そして、展示されるものは全部が中間成果物になってしまう。僕たちの完成物=作品と言えるものは1本の映画だから、その過程で生み出されるものは、原画にしろイメージボードにしろ、コミュニケーションの過程なわけです。これらを通じて僕たちはスタッフとコミュニケーションして、その果てに映画がある。そのコミュニケーションそのものを観客に見せようという発想は僕にはなかった。今回、ここまで大規模な展覧会になるということは、キュレトリアルチームがそこになんらかの意味づけや、文脈を見つけて、展覧会をつくってくれていると思うんです。僕はそこを楽しみにしています」。
『君の名は。』の作中にも登場した国立新美術館で、展覧会を通じて新海誠の世界を堪能したい。