1960年代末のニューヨークで生まれ、世界に広がったグラフィティ文化。近年では、国内外で展覧会が開催され、歴史的検証や文脈化が進められてきた。
『美術手帖』6月号の特集では、現代美術とグラフィティ文化を横断する活動を続けてきたアーティスト・大山エンリコイサムとともにグラフィティ文化を多面的に紐解く。そして、「落書きの想像力」をキーワードに、NYグラフィティ文化を起点としつつ、近現代美術史に広がるもうひとつの表現の空間を展望する。
第1部は大山エンリコイサムキュレーションによる誌上展覧会「ALTERSPHERE 落書きの想像圏」。グラフィティ・近現代美術・書・建築・写真・ヴィデオ・サウンドなどを横断する31作家を、11テーマに構成して紹介する。
また、フューチュラ2000、ホセ・パルラ、PHASE2とCOCO144など、巨匠から人気作家、70's初期グラフィティ文化の先駆者へのインタビュー取材を敢行。それぞれの時代をつくりあげてきた重要人物の貴重な声をお届けする。
第2部はグラフィティ文化の変遷をたどる年表や、ブック&映画の入門ガイド、そしてグラフィティ文化と絵画史の直接・間接的な関係を、落書き的表現を持つ美術作品の解説や論考を通して紹介。
第3部は識者を交えての鼎談や論考による理論編。批評家、ラジオ・アートの活動でも知られる粉川哲夫と大山による往復書簡を素材に構成された言語の実験空間「lingosphere」や、美術史家・林道郎、書の研究者・栗本高行、大山による鼎談を収録し、文字の造形表現とその可能性を展望し、落書きの想像力の拡張性を見据える。
また、特別付録として、大山エンリコイサム描き下ろしのステッカーを封入。
グラフィティ文化を多角的にとらえた100ページを超える総力特集。グラフィティ初心者への入門編として、また、深くグラフィティについての思考を鍛えたい人まで、楽しめる内容になっている。