出展作品の政治的な内容が、在オーストリア日本大使館により問題視され、日本とオーストリアの国交150年の記念事業としての公認を取り消された「JAPAN UNLIMITED」。この展覧会に参加するウィーン拠点のアーティスト・丹羽良徳が、この件に関して美術手帖にコメントを寄せた。
丹羽は本展に《日本共産党にカール・マルクスを掲げるように提案する》(2013)や、《私的空間からアドルフ・ヒトラーを引き摺り出す》(2018)を出展している。
政治制度や歴史を問い直す作品をつくり続ける丹羽。展覧会の公認撤回という事態については、次のようにコメントしている。
在オーストリア日本大使館による「日本オーストリア友好150周年事業」の撤回は、大使館からすれば国内批判をかわすための緊急措置としか思ってないだろう。展覧会に金銭的支援もないから撤回も簡単だろうし、コメントもなかったようだ。 ただ大使館職員も展覧会イベントに参加していたので、内容は充分知っていたはずだ。自民党政治家から圧力を受けたからと言って一度認定したものを易々とオープニングの5週間後に撤回する保身的な態度は、オーストリアの企画側には困惑とネガティブな印象を与えた。しかしそれは同時に、展覧会企画の核心となる「日本の危うい政治的状況を映し出す『予定通りの過剰な反応』を引き出すことに成功した」と受け取られているのが本音のようだ。 同じ施設のほかの展覧会と比べても来場者が多く、評価も高いと聞く。自国を批判的に表現できるのは、成熟と余裕のある証拠で、日本社会がもう一歩オープンで豊かな社会構築に踏み出せるよう、日本の中央政府が何を言おうとも、我々は日本のために働いているわけではないのだから、もっと自由に、もっと批判的に、世界各地の表現者たちと協働していきたい。