NEWS / HEADLINE - 2019.5.31

動画配信サービス上のネットスクール始動。
「カオス*ラウンジの芸術動画」は新たなアートシーンの震源地となるか?

カオス*ラウンジが、動画サービスniconicoの「ニコニコチャンネル」にてアートチャンネル「カオス*ラウンジの芸術動画」を開設。1年単位で構成したカリキュラムを、毎週生放送で配信するインターネットスクールが、本日5月31日よりスタートする。

 インターネット上で授業が受けられるアートスクール「カオス*ラウンジの芸術動画」が、本格放送開始前からすでに100人以上の会員を集めている。
 「芸術動画」とは、黒瀬陽平率いるアーティストグループのカオス*ラウンジが、ニコニコチャンネル(ドワンゴ運営)上に開設した会員制チャンネル。レギュラー番組と、不定期の特別番組が週1回のペースで配信される。

 番組内容は、美術史家の松下哲也や新藤淳、サイドコアの松下徹らをゲスト講師とする連続講義「日本現代美術史を批評する」、仏教学者の亀山隆彦を迎えた「現代美術と宗教思想」、美術家・梅津庸一と黒瀬が最新の展覧会評を展開する「展覧会レビュー」など専門性、批評性の高いカリキュラムが並ぶ。

 さらに月額会員(月額3780円)になると、会員が投稿した作品を生放送で講評する「ニコ生講評会&制作相談」、カオス*ラウンジが取り扱う作家作品を先行予約・購入する「ニコ生内覧会」など、双方向のコミュニケーションが可能なコンテンツが用意されている。

 ディレクションを担うカオス*ラウンジ代表の黒瀬陽平は、「ゲンロン カオス*ラウンジ新芸術校」で5年にわたり講師を務め、「アーティストの育成」を目的とした、1対1の密度の濃い指導を行ってきた。近年は弓指寛治、磯村暖といったアーティストも輩出している。対面のコミュニケーションを重視する新芸術校に対して、「芸術動画」は、より広いアートファンに開かれた場として設定されている。

 「新芸術校は、1年間フルコミットすることで高い教育効果を上げることができますが、すべて対面のコミュニケーションであるため、受け入れ可能な人数に制限があった」と黒瀬はいう。そこで意識したのは教育現場における生徒との距離感だ。「ネットを使って、”ちょうどよく”閉じた教室をつくるにはどうしたらいいかということを考えました。『芸術動画』では『講評会』を重要なコンテンツとしてとらえています。会員に対して丁寧な講評をすることで、オンライン上であっても彼らとの関係性は強まり、またその様子を見守る視聴者にもメンバーシップの意識が生じます」。

 教育現場での経験を通して、アーティストを目指す学生へ、的確な指摘を行う指導法には「美大や藝大よりもはるかに丁寧」と自負を持つ。そうした教育現場のディスカッションを会員限定で公開することにより、視聴者が「自分の意識に考え方に確信を持つことができる媒体」を目指すという。

 「美大生や藝大生にはぜひ見てほしい。また何歳であろうと、アートを知りたい、つくりたいと思う潜在的なアーティスト、コレクター、批評家に届くといいと思います」。

 現段階では、都内の民家をスタジオに改装して放送しているが、将来的にはイベントスペースを持ち、オンライン上での内容をそのまま移行して、リアルスペースでの運営も見据えているという。活動の根本にある目的は「アートのプレーヤーを増やすこと」。芸術動画の視聴者のなかから新たな才能が誕生し、新たな視聴者を惹きつける、そうした生成の場をつくることが長期の展望だ。

 美術を講義形式で学ぶだけでなく、会員は自作の作品の批評や指導を受け、作品の購入もできる、「学校」と「ギャラリー」機能を兼ね備えた新たなプラットフォームは、アートの生態系を育む場となるだろうか。今後の展開に注目したい。