今年2月、多摩美術大学の大学院彫刻専攻に在籍する学生有志が、「現在の教授全員で全員の学生を見るというシステムの見直し」「技術と制作理論を分ける考え方のもとに、バランスのとれた人事の決定」という2点を明記した上で、大学に要望書を提出した。そして11月3日、諸問題への認識改善のない大学の現状を踏まえたうえで、学生・卒業生有志が新たな抗議声明を発表した。
「彫刻学科の縁故採用に対する抗議声明」と題された今回の声明では、2月に提出した要望書について、3月、彫刻学科より「回答には相応の時間がかかる」と返信のメールがあったにもかかわらず、それから約8ヶ月経った現在まで回答、メールの返信がないことを説明。
そして、「一度専任となった教員は、作家としての努力や教育者としての責務を怠り社会的な評価が得られずとも、その立場を約束されています」として、実績とは無関係な縁故採用を指摘。これを、家長たる男性が権力を独占し、父系によって親族関係が組織化される家族形態にもとづく社会的制度「家父長制」と表現。この構造が変わらない限り、「ハラスメントが横行し、教育が破綻している現状は改善しない」と、ハラスメントにひもづく問題を主張している。
今回の声明が発表された彫刻科有志によるウェブサイトでは、2月から現在までの声明、対応などの流れをたどることができるほか、本件に賛同する人々の連絡もメールで受け付けつけている。今後、大学がどのような対応を行うのか注視したい。