《きずな》廃棄をきっかけに考える。美術評論家連盟がシンポジウム「事物の権利、作品の生」を開催

今年5月、東京大学中央食堂に展示されていた宇佐美圭司の絵画《きずな》が廃棄された。これに端を発し、美術評論家連盟が「事物の権利、作品の生」と題したシンポジウムを開催する。日程は11月11日。

東京大学中央食堂に設置されていた宇佐美圭司の《きずな》 写真提供=大学関係者

 美術界に大きな衝撃を与えた東京大学による宇佐美圭司の絵画《きずな》の廃棄。この件を受け、9月28日には東京大学の大講堂(安田講堂)でシンポジウム「宇佐美圭司《きずな》から出発して」が開催されるなど、いまなおその余波は続いている。

 そんななか、美術評論家連盟が11月11日にシンポジウム「事物の権利、作品の生」を開催することを発表した。

 同連盟は、《きずな》廃棄について、「そこで毀損されたものは、著作者である作者の権利のみならず、作品の権利であり、作品の生命でした。またそこで抑圧され、破壊されたのは、作品とよばれる物体だけではなく、作品に内在する知的体系(歴史・行為・魂の集積)であり、そして失われた未来の時間に孕まれた、作品が生み出し私たちに与えたはずの、さまざまな経験や思考=批評でもあったはずです」と表明。

 本シンポジウムは、「人間的な生と深く関わりつつ、それ自体としての生を生きる芸術的オブジェクトの存在論を議論すること」を目的としているという。

 シンポジウムは前半の発表と後半のパネルディスカッションで構成。発表には池野絢子(京都造形芸術大学大学院芸術研究科[通信教育]准教授)、金井直(信州大学人文学部教員)、蔵屋美香(東京国立近代美術館企画課長)、沢山遼(美術批評)、星野太(美学、表象文化論)が登壇。ディスカッションでは林道郎(上智大学国際教養学部教授)がモデレーターを務める。

編集部

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