長野県北西部の大町市で、2017年より開催されている「北アルプス国際芸術祭」。その第3回目となる「北アルプス国際芸術祭2024」が9月13日~11月4日の会期で開催される。
今回の会場は、市街地エリア、ダムエリア、源流エリア、仁科三湖エリア、東山エリアといった、大町市の特色が色濃く現れる5エリア。今年は信濃大町の魅力とも言える「水・木・土・空」をテーマに掲げ、10の国と地域から31組のアーティストが参加する。
鈴木理策は大町の水資源をテーマに、写真と映像作品を展示する。かぎ針編みによるカラフルな生き物の世界をつくり出すムルヤナ(インドネシア)は、大町市の商店街の空き店舗を使用し、「食」と「編みぐるみ」と「モンスター」で人がつながる空間を創出するという。
「TERRADA ART AWARD 2023」でも注目を集めた大町市在住の村上慧は、近年は自然現象を利用した冷暖房などを使う生活の実験を繰り返している。今回は、地域の落ち葉の発酵熱を用いた「足湯」によって「熱の連帯」を感じるための装置をつくり出すという。
人々の記憶をたどる作品を展開するロシアのエカテリーナ・ムロムツェワは、大町の民話に基づいた物語を影絵で表現する。
場所の歴史や物語などを起点に、小さなスケールから大きな空間まで、多様なインスタレーション作品を制作する韓国のソ・ミンジョン(韓国)は、炭化した倒木が発泡スチロールを溶かして沈む巨大なインスタレーションを発表予定だ。
また、自然素材の特性を活かしたインスタレーションで知られる台湾のヨウ・ウェンフーは、地域の竹を使用し、公民館を覆う大規模なインスタレーションを見せるという。
遺跡や風化した建造物を思わせる彫刻をつくる南アフリカのルデル・モーは今回が日本で初の作品発表。地元の土・竹を材料し滞在制作する。
こうした新作群のほかにも、目[mé]の《信濃大町実景舎》(2017)や、ジミー・リャオ(幾米)《私は大町で一冊の本に出逢った》(2017 / 2021)、淺井裕介《土の泉》(2017 / 2021)、松本秋則《アキノリウム in OMACHI》(2021)など、第1回〜2回で制作された既存作品ももちろん見ることができる。
今回の芸術祭にあわせ、総合ディレクターの北川フラムは以下のようなメッセージを寄せている。
長野県大町市は山からの急流と仁科三湖を抱く北アルプスと東山の丘陵に囲まれた田園地帯で、山の自然と人間の生活が浸透しあう美しい土地です。古くから神社や塩の道、近代では黒部ダムをはじめとする土木構築物を創り出し、土地に深く刻まれた人々の生活と歴史が今も鮮やかに残っています。迸る清流、東西の樹種が混じる森林、岩盤のうえの丘陵地、そこから見上げる世界とつながる高い空が信濃大町の美しい空気を感じさせてくれます。世界各地のアーティストたちは土地の力と記憶に寄り添い、切れ味の鋭い作品を提示してくれるでしょう。人と自然が織り成す清々しい秋の大町にぜひお越しください