六本木の街を舞台にした一夜限りのアートの饗宴であり、4年ぶりのオールナイトで開催される「六本木アートナイト2023」(5月27日〜28日)が、プログラムの全容を発表した。
今回は、メインプログラム・アーティストの栗林隆+Cinema Caravan、鴻池朋子を含め、約45組のアーティストによる約70のプログラムを展開。エリア内の美術館をはじめとする文化施設や大型複合施設、商店街など街全域を舞台に、ペインティングやインスタレーション、音楽、パフォーマンス、映像、トークなど、多様なプログラムが満喫できる貴重な機会だ。
活動初期の頃から「境界」をテーマに大がかりなインスタ レーションを中心に多様な作品を発表している栗林隆は、2009年から共同活動を始めた、写真家、大工、料理人など多様なメンバーによって構成されるコレクティブCinema Caravanとともに、六本木ヒルズアリーナでアートエネルギーを船に載せ、世界中に届けるという《Tanker Project》を発表。
絵画、彫刻、パフォーマンスなど様々なメディアと、旅によるサイトスペシフィックな表現で芸術の根源的な問い直しを続ける鴻池朋子は、屋外展示で話題を呼んだ《皮トンビ》を東京ミッドタウンに降り立たせながら、国立新美術館では《狼ベンチ》など、動物をモチーフとした作品も展示する予定だ。
またメインプログラムには、志津野雷+Play with the Earth Orchestra、Otoji+Ray、OKI+MAREWREWといった3組のアーティストも参加。Cinema Caravanの代表を務める志津野雷は、世界を旅して切り取った記録を紡いだ映像作品《Play with the Earth》にあわせてライブ公演を披露。ベース“Otoji”とバイオリン“Ray”のDuoによるコンサートでは、スペシャルな弦の世界観とシンプルな編成を生かし、オールドジャズ・クラシック・ジプシー音楽・民謡・エレクトリック等の要素を取り入れたオリジナル曲による公演を行う。旭川アイヌのOKIと、北海道や樺太に伝わる新旧様々なアイヌの伝統歌「ウポポ」の再生と伝承をテーマに活動する女性ヴォーカルグループ・MAREWREWによるライブコンサートでは、「アイヌの伝統はアイヌ自身が発展させ楽しむ」をモットーに生み出される斬新なサウンドを楽しむことができる。
また、国際的パフォーマンスカンパニーClose-Act Theatreによる《White Wings》にも注目したい。巨大な白い翼を纏った幻想的なキャラクターが優雅にウォーキングし、音楽と光の演出とともに壮大なパレードを行い、鑑賞者を異次元へと誘う。
そのほか、六本木ヒルズでは、100色で彩られた層が織りなす、記憶をたどるエマニュエル・ムホーのインスタレーション《100 colors no.43「100色の記憶」》や、大小島真木+Maquisが直径1メートル超のミラー貼りの正十二面体オブジェを中心に、ガラス造形、鉄工、植物、LED照明、音響などを交えて展開するミクスドメディアのインスタレーション《SHUKU》などの新作も公開される。
六本木交差点エリアでは、ステレオタイプな六本木のイメージとは異なる、家族、商店街、生活といった六本木の姿をとらえた長谷川仁の《六本木のカタガタ》や、岩崎貴宏のインスタレーション《雨の鏡》など、六本木という地域の歴史に目を向けた作品の展示や、地球が人間視点による無数の事実を語る林千歩の映像作品《もうないかもしれないよ》の上映も行われる。
さらに、西尾美也は東京藝術大学学生とともに、三河台公園、六本木中学校、同校の向かいに開く西尾研究室(矢口ビル1階)の3ヶ所で、地域から学び、地域の方とともに生み出す「共有空間」を作品として提示する予定だ。
なお今年は、インクルーシブ・アート・プログラムとして様々な人たちともに巡る鑑賞ツアーや、外国語ガイドツアー、デジタルプログラムも行われる予定。驚きや感動、出会いに満ちたアートナイトを機に、六本木へ出かけてみてはいかがだろうか。