神奈川・相模原のパープルームギャラリーで、美術大学の入試で課題として出される絵画作品「受験絵画」の歴史とあり方に焦点を当てた展覧会「青春と受験絵画」が開催される。会期は11月28日〜12月6日。
同展覧会は、パープルームの代表・梅津庸一によって、受験絵画や美術予備校教育について再考し、記録することを目的に企画された。
同展で扱われる「受験絵画」とは、油絵科および絵画科の試験用のための修練として描かれた作品、あるいは合格作品の再現作品を指す。このジャンルを梅津は、たんに「うまい」や「下手」という二元論で評価したり鑑賞することが困難であり、美術史や絵画史と直接ひもづけることも難しい、特殊な進化を遂げた領域であるとしている。
いっぽうで美術予備校は、アーティストの働き口であったり、美術雑誌の広告収入において一定の割合を占めていたりと、美術大学や美術業界とともに大きな円環を成してきた存在だ。だが、こうした美術予備校や受験絵画については、一部の例外を除き、表立って語られることは少なかった。しかし、近年は受験絵画や美術教育を題材にした展覧会、漫画、小説、研究書が立て続けに開催・発表され注目が集まっている。
同展には60年代に描かれた作品から、現在高校に通う生徒の受験絵画まで50年以上の期間にわたる受験絵画27点が展示される。各年代の実作品を、受験に必要とされる技術や流行などを踏まえながら、そこに発生した潮流を考えつつ振り返る。
梅津は、同展の開催にあたり次のようにコメントをしている。「受験絵画というテーマは多くの人々にとって一見、狭くニッチなものに思われるかもしれません。しかしながら受験絵画にはとても多くの論点が含まれているのです。美術界の学閥問題やキャリアパスのあり方から『絵画の見かた』、『中心と周縁』、『人間にとって美術や絵画とはいったいなんなのか?』という本質的な問いまで、挙げたらきりがありません。また、ある特定の文化や技術体系がどのように受容され普及してきたのかといった歩みは美術に限らずあらゆる分野の営みと通じているはずです」。