2016.11.4

TOKYO DESIGN WEEKに見る
東京文化プログラム

1986年に「デザイナーズサタデー」という名称でスタートした東京の秋の風物詩、「TOKYO DESING WEEK」(以下「TDW」)が明治神宮外苑 絵画館前を会場に、11月7日まで開催されている。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた機運が高まるなか、今年は「TDW」に初めて「東京文化プログラム」が盛り込まれている。「IMAGINE FUTURE」と題された今回のプログラム、その中身とは?

TOKYO DESIGN WEEK会場風景 天井に設置された鬼頭健吾の巨大作品が会場を彩る 撮影=稲葉真
前へ
次へ

AirTent展

「東京文化プログラム」は、アーツカウンシル東京が2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、今後4年間に様々な文化プログラムを展開するとともに、文化の面でのレガシーを2020年以降に継承していこうというもの。今回、広大な会場で最も目を引くのが、その「東京文化プログラム」の一つであり、「TDW」のメインコンテンツでもある「AirTent展」だ。

 4メートル×4メートルの透明なバブル型テントの中に、「落合陽一×筑波大学デジタルネイチャーグループ」や、「椿昇×京都市立芸術大学」、「トーチカ × 大阪電気通信大学」など、アーティストと学生たちがタッグを組んで制作した作品が並ぶ。若い才能を花開かせるような、オリジナリティあふれるドームには、体験型のものもあるので、ぜひ参加してもらいたい。夜にはライトアップされ、幻想的な風景が広がるので、表情の変化も楽しめる。

トーチカ×大阪電気通信大学による《みんなでパタパタ! 東京 新5競技》。ポンプで空気を送ると、2020年東京五輪で新たに加わる新種目のピクトグラムがパラパラ時計のように動く 撮影=稲葉真
椿昇×京都造形芸術大学の《干潟の猫》展示風景。猫が跳躍する様子を、ストップモーションのように表現した
夕暮れとともにライトアップされたAirTent展。幻想的な風景が広がる

建築模型展

 日本建築家協会の受賞作品など、現在活躍中の建築家の作品が一堂に集まる、TDW恒例の人気コンテンツ「建築模型展」。今回は、新国立競技場も担当する隈研吾が設計し、2020年に暫定開業、2024年に本開業する予定の「品川新駅(仮)」の模型が展示されているほか、今年銀座に開業したクライン ダイサム アーキテクツによる「GINZA PLACE」など旬な模型や、田根剛設計の美術館を含む複合文化施設「10: Jujo Project」(2020年京都に完成予定)なども。また伊東豊雄が、新国立競技場コンペに出品し落選した模型を展示していることも注目だ。(TDW会場の絵画館前は、新国立競技場のサブトラックとなる予定)

伊東豊雄による新国立競技場建築模型 撮影=稲葉真
田根剛による「10: Jujo Project」の模型

スーパーロボット展

 マルチメディア・コンテンツの分野で活動する岡田智博がキュレーションし、2014年の初回から好評を博した「スーパーロボット展」が今年も開催されている。岡田が「クリエイティビティによる一つ先の未来、もしくはロボットやIoTに対する固い考え方を打ち崩して、自分たちの生活のヒントになるようなものを持ち込んだ」と語る今回。いわゆる「ロボット」という単語から連想されるようなメカニカルなものだけでなく、クリエイターの創造力が存分に活かされた独自性あふれる作品が並んでいる。

力石咲《ニット・インベーション》の展示風景 撮影=稲葉真

 茨城県北部で開催中の「茨城県北芸術祭」(11月20日まで)にも参加している力石咲は、TASKO inc.と共同開発した、自動でニットを編み出すマシン《addi UFO》を軸に、これまでの《ニット・インベージョン》をアーカイブとして展示。ロボットクリエイター・高橋智隆とシャープは、市販されているロボットスマホ「ロボホン」によるパフォーマンスを日本で初めて公開。今年のアルスエレクトロニカで好評を博した、愛らしくも高い技術力を感じられる演技に注目だ。ヒトとロボットの音楽ユニット「mirai capsule」は、100年前のクラシック音楽を、新しい生命体である「ロボット」と人間が一緒に演奏。ヒトとロボットの関係を問うている(会場では6体のペッペーとともに合唱を披露予定)。

 岡田は「機能としてのロボットや、アートとしてのロボットというよりも、アートやデザインを通じて、個人の創造力を大事にし、見せていくというのがこのスーパーロボット展」と、本展の特色を語る。今回は特に「ネットでは見たことがあるけど、実際には見たことがないもの」を見せることに注力したという。個々のクリエイターがそれぞれの探究心を追求した展示にぜひ注目してほしい。

パフォーマンスするロボホン 撮影=稲葉真

 「TDW」では、これら「東京文化プログラム」以外にも、様々なジャンルのクリエイターが写楽にインスピレーションを受けた作品を展示する「写楽インスパイア展」や、50校を超える国内外の学校が「pairs」をテーマにクリエイティブで競う「学校作品展」、TDWの特色でもある貨物用コンテナを使った「スーパーコンテナ展」、100人の若手アーティストが集う「100人展」など、多彩なコンテンツが用意されている。日本最大規模のデザインの祭典をお見逃しなく。

東急グループはクリエイティブカンパニー NAKED Inc.とコラボレーションし、再開発後の渋谷の街をプロジェクションマッピングで表現 撮影=稲葉真
「写楽インスパイア展」に展示された浅葉克己の《口、鼻、目、耳、七ツの穴を売り〼写楽屋》(2016) 撮影=稲葉真
会場には大小島真木による巨大平面作品《生きとし生けるものたちの饗》(2015)も展示 撮影=稲葉真