2016年春、岡山県岡山市に開館した「S-HOUSEミュージアム」は、妹島和世と西沢立衛による建築家ユニット・SANAAが初めて設計した木造個人住宅を改装した美術館。今日の日本美術の「中心」として、同時代を生きる美術家の支援を続けている。
いっぽう、美術の「中心」を扱うS-HOUSEミュージアムに対して、その「周縁」の表現に目を向けているのが、同時期に広島県福山市に開館したクシノテラスだ。クシノテラスは、いまだ評価の定まっていない市井の人たちの表現を数多く紹介している。
「中心/周縁」という一見相反するまなざしを持った2つの美術館が、初めて協働し「越境するミュージアム」展を開催する。展覧会タイトルの通り、それぞれが持つコレクションを交換し展示することで、「枠組み」や「境界線」などの既存の価値観や先入観を解きほぐそうと試みる。
本展は、「対とされているものどうしは、『いまをどう生きるべきか』ということへのヒントが潜んでいる点においては共通しており、実は表裏一体の性質を持っていること」を示唆する。