中国のガラスの起源は春秋時代末期から戦国時代にまで遡り、以降長きにわたって、様々な儀礼用の道具や、装飾品での貴石や玉の代用品として利用されてきた。その長い歴史の中で、「ガラス工芸」が飛躍的に発展したのは清王朝(1616〜1912)の時代。紫禁城内にガラス工房・玻璃廠(はりしょう)を設置し、「皇帝のためのガラス」作りを開始したことを契機に、ヴァリエーション豊かな作品が生み出された。
ガラスといえば「透明感」や「儚さ」が魅力としてあげられるが、清朝のガラスはそれらとまったく趣を異にして、透明と不透明との狭間の色彩、そして重厚で卓越した彫琢を特徴としている。アール・ヌーヴォーを代表する芸術家、エミール・ガレもまたその美しさに魅了され、自身の作品に取り入れた。
本展では、清朝の作品を中心に、中国のガラス工芸の歴史をたどる。さらに、ガレの作品を、そのインスピレーションとなったであろう作品と比較しながら展示。清朝皇帝、そしてアール・ヌーヴォーの芸術家が愛したガラス工芸の魅力を紹介する。