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2022.6.13

コマーシャルと批評性をいかに両立させるか? 香港のギャラリー「PHDグループ」の共同設立者が語る

2022年、香港・銅鑼湾の商業ビルに新たな現代アートギャラリー「Property Holdings Development Group」(PHDグループ)がオープンした。ギャラリストと評論家の夫婦が共同設立したこのスペースが目指す、コマーシャルと批評性の両立という方向性について、話を聞いた。*The English version is below the Japanese.

聞き手・文=Tiffany Leung(アートライター) 翻訳=編集部

イサベル・チェン(左)とウィレム・モールズワース
All images courtesy of the artists and Property Holdings Development Group
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 香港の銅鑼湾(コーズウェイベイ)にある地味な商業ビルの最上階にひっそりと佇む「Property Holdings Development Group」(以下、PHDグループ)は、2022年初頭にオープンした新進の現代アートギャラリー。共同設立者は、デ・サルテ・ギャラリーの元ディレクター、ウィレム・モールズワースと、アートライターで評論家、『ArtAsiaPacific』の元編集長のイサベル・チェンの夫妻だ。

 覇権主義的で均質化されたコマーシャルアートの世界において、PHDグループは、市場主導型のアートと批評的な関わりのあいだに自分たちを位置づけることで、その存在を際立たせている。もともとチェンの亡き祖父とふたりのビジネスパートナーが所有していた会員制のプライベートクラブだったこのギャラリーは、3000平方フィートのスペースを「改築・更新」したもの。ここでは設計、家具、記念品、春画や硬貨のコレクションなど、70年代のクラブの全盛期から多くの特徴を現代に受け継いでいる。

──PHDグループのアイデアはいつ、どのようにして生まれたのでしょうか?

ウィレム・モールズワース(以下、ウィレム) ごく自然に生まれたもので、ギャラリーを開くことを人生の野望のひとつとして掲げていたわけではありません。私は自分のキャリアにおいて、ギャラリーを開くということがいかに困難なことであるかを知っているので、「絶対にやりたくない」といつも言っていたくらいです。でも、デ・サルテ・ギャラリーでの仕事が終わり、イサベルが小説を書き始めて1年ちょっと経った頃、自分たちが何をしたいかという話をしはじめました。

こけら落とし展「Rendering」(2022)の展示風景より Photo by Zed Leets

 私はイサベルと一緒に仕事をするのがとても好きで、ニューヨークで同僚として出会ったのが最初です。私たちは、以前から行っていた「Suitcase Institute」プロジェクト(編集部注:スーツケースで作品を巡回展示するプロジェクト)を発展させようと考えましたが、非営利のモデルでは、柔軟性や主体性がないため、私たちがやりたいことや達成したいことに対応できないことに気づきました。こうして、アートギャラリーをオープンするという、率直に言って予想外の結論に至ったのです。

──あなたにインスピレーションを与えたギャラリーやプロジェクトスペースはありますか?

ウィレム 香港のEmpty Galleryは間違いなくそのひとつで、彼らは非常に異なったことを行っていると思います。もうひとつ、私たちが長いあいだ尊敬している地元のギャラリーHanart TZです。彼らのプログラムは本当に興味深く、有意義な方法で香港に根ざしており、PHDグループと共鳴しています。

──おふたりとも香港、ニューヨーク、ロンドンに住んで仕事したことがありますが、なぜ香港でギャラリーを開くことにしたのですか? そしてそれはどんな意味があるのでしょうか?

イサベル・チェン(以下、イサベル) 香港は、私たちがもっとも強い芸術的なネットワークを見つけた場所です。ギャラリーや美術館、キュレーターだけでなく、アーティストやほかのアート関係者、友人など、あらゆる人たちとの。私たちは香港で様々な仕事をしてきましたが、ほかの場所にはない、芸術的なコミュニティのいち員として一緒に成長してきた感覚があります。以前、ロンドンやニューヨークにいたときよりも、ここでは強いつながりを感じているのです。

こけら落とし展「Rendering」(2022)の展示風景より Photo by Zed Leets

 ここは新しいギャラリーにありがちな金銭的な制約がなく、家族のスペースであることも大きな要因のひとつです。心配事はありますが、このスペースは私たちの活動をスタートさせるのにとても役立っていると思います。運命や宿命とは言いたくないですが、何か神話的なものがありますからね。ウィレムと私は、ここに至るまでに本当によく働いてきたと思いたいのですが、何か特別なものへの鍵を授かったように思えました。

ウィレム 私は香港に住んで6年になります。この場所がとても好きで、イサベルが話したように、コミュニティと深いつながりがあります。私たちは深刻なトラウマを経験しており、それがよりいっそう私たちを深く結びつけています。香港はクリエイティブな面で多くのものを提供していますが、それが国内外で十分に評価されているとは思えません。それを是正していきたいのです。

──最初からクラブハウスにこだわりがあったのですか?

イサベル 最初からこの場所が候補だったわけではありません。じつは、自分たちのアパートなど、ほかの実験的な選択肢も考えていたのです。しかし、クラブハウスの改修を担当したボー・アーキテクツ(Beau Architects)と連絡を取り合い、彼らの協力によって可能性が広がりました。アパートメントギャラリーは香港では以前から行われていましたが、クラブハウスに出会ったことで、香港ジョッキークラブ(編集部注:香港のアートセンター「大館(タイクン)」を運営する競馬の競技団体)とは異なる方法で、とくに遺産や遺跡を保存するという考え方に非常に興味を持つようになりました。彼らが大館で行ったことは美しいことですが、私たちは家族の歴史やオルタナティブな物語を保存するという点で違うことを行っているのです。

こけら落とし展「Rendering」(2022)の展示風景より Photo by Zed Leets

──このスペースを最初に手がけたときはどんな感じでしたか?

イサベル 過去10年ほど放置されていたため、多くの問題がありました。最初にこのスペースを見た人のなかで、ボー・アーキテクツはとても熱心で、その熱意が私たちを説得しました。たしかに改修中は死ぬかと思うような日もありましたね。しかし、死は一種の再生であり、このプロセスを通じて、私たちはこの空間について多くを学び、とても親密に感じるようになりました。

ウィレム 決して良い状態ではなかったのですが、私たちを呼び続ける何かがあったのです。

──亡き祖父の遺品やオブジェ、アートのコレクションを収めた魅力的なビデオを制作され、PHDグループのソーシャルメディアで見ることができますね。コレクションの選別とアーカイブのプロセスについて詳しく教えてください。

イサベル 明らかに傷んでいたり、放置されていたものが多かったので、そのプロセスを表現する言葉としては「苦痛」があります。しかし、ウィレムにとっては素晴らしい再発見の瞬間だったようです。私はすべての品物を調べることに消極的でしたが彼はとても熱心、という緊張関係がありました。ウィレンがすべてやってくれたので、私は祖父のコレクションを鑑賞することができました。

 ちょうどその頃、大館で「Portals, Stories, and Other Journeys」という展覧会を見ました。この展覧会は、アジア・アート・アーカイブ(AAA)がキュレーションしたもので、香港のアーティスト、故夏碧泉(ハ・ビック・チュエン)(1925〜2009)の個人的なアーカイブをもとにしています。この展覧会は、誰かのライフワークをアーカイブし、それを見ていくことの意味を問うており、私にとって非常に意味のあるものでした。また、AAAは『The Orpheus Double Bind: What Can Writing Save?』という、人物や歴史的な出来事の記憶を蘇らせることをテーマとした本も刊行しました。クラブハウスが元々どのようなものであったかの写真がなかったため、各部屋の環境を再構築し、現代美術の展示という目的のためにアップデートしながら適応させる必要がありました。このスペースで行われたすべてのデザインとデシジョンは、非常に計画的であり、私たちはつねにこのスペースのアイデンティティについて考えていました。

ウィレム 適応のプロセスが、私たちがこの場所をどのように構想してきたかの鍵になります。集い、共有する場としての機能を維持するために、壁を取り払うことも、新たに壁を立てることもしませんでした。なるべく手を加えず、既存のかたちを生かしたのです。

「Virtue Village: Village Porn」展(2022)の展示風景より Photo by Zed Leets

──アーカイブ、保存、個人的な関係といった考え方は、アーティストやコレクターとの仕事の進め方にも反映されているのでしょうか?

イサベル 私たちが意図的に行っているわけではありませんが、私たちのアーティストは皆、非常に研究的な活動をしています。また、彼らの多くは集団的な実践やコラボレーションという考え方に深い関心を抱いており、私たちもそれに非常に興味を持っています。これは、香港のアート・コミュニティを反映したものだと思います。

ウィレム プログラムではそれを積極的に取り入れるようにしています。私たちは2組のアーティストを取り扱っていますが、一緒に仕事をするアーティストの多くは、ほかの人と一緒に作品をつくることに興味をもっています。PHDグループという名前も、ダジャレではありますが、自分たちを集団のようなものだと考えていることを表しています。そのことを意識して活動していきたいと思っています。

──コマーシャルギャラリーのなかで、どのように有意義な空間をつくるのでしょうか? アーティスト、コレクター、そして一般の人々のあいだには、アートの意味や消費のされ方について、本質的な緊張関係があるように感じますが。

イサベル これは興味深い質問で、私たちもギャラリーをオープンすると決める前から話していたことです。不安は避けられないと思いますが、私たちふたりの現場での経験から、その不安と課題を面白い方法で解決することができると思います。それはつまり、居心地の悪い会話をすることです。例えば、香港のアーティスト、ミシェル・チューの月経血で構成されたテキスタイル作品を、ギャラリーのなかでもっとも販売志向の強い空間であるビューイング・ルームに展示しています。コレクターのなかには、この作品に嫌悪感を抱いたり、気分を害したりする人もいて、不評を買ったこともありました。そこで私たちは、作品を撤去したり、彼らに同意したりするのではなく、彼らと会話をし、その場にとどまることにしたのです。というのも、その空間に長くいればいるほど、素材自体に不快感はないことに気づくからです。月経血とは何かという先入観や、女性とその身体をめぐる社会的な期待があるだけなのです。

「Virtue Village: Village Porn」展(2022)の展示風景より Photo by Zed Leets

 これは、私たちがどのようにアプローチしているかを示す良い例だと思います。コレクションにふさわしくないと思われる作品や、多くの人が容易に消費できない作品もありますが、私たちはそれに挑戦する覚悟があります。難しいことなので、いつも楽しんでいるとは言いませんが、その違和感にかかわり、できれば人々がアイデアを議論するプラットフォームになりたいと思っています。

ウィレム マーケットに対してもっと問いかけ、あらゆることに疑問を投げかけようとすることです。私たちは虫眼鏡を掲げて、「どうしたらもっとうまくできるのか」「どうしたらこれと関わり、コレクターとそれについて会話ができるのか」と問いかけたいのです。また、ギャラリーには「The Study」というスペースがあり、コマーシャルギャラリーの伝統的な構造とは別に、人々が集まり、会話し、アイデアを共有できるような場所となっています。

イサベル 香港のカフェの歴史──2019年にパラサイトで行われた瞿暢(チュー・チャン)がキュレーションした「Café do Brasil」展で探求された──と同様に、一種のラディカルな社会空間ですね。もちろん、私たちはコマーシャルギャラリーですが、商業的な主導権と批評性のあいだになんらかのコラボレーションができればと思っています。

──今後の展覧会やプログラムの計画について教えてください。

ウィレム 現在開催中の「Virtue Village: Village Porn」展の後、夏にはイサベルの祖父の古い春画コレクションを展示し、9月には笹岡由梨子の新作ビデオとペインティングを展示する予定です。カーニバルのような雰囲気で、メンタルヘルスと魚の頭をテーマにした展示になります。笹岡のビデオでは、彼女が食べた魚の頭を使って人形やパペットをつくり、魚に新しい生命を与える方法を紹介しています。この後、11月にはディラン・デローズ、翌年にはゼン・マーラー、ミシェル・チューを紹介する予定です。

「Virtue Village: Village Porn」展(2022)の展示風景より Photo by Zed Leets

──おふたりのアプローチの仕方で似ているところ、あるいは違うところがありますか?

ウィレム 私たちは、ある物事のとらえ方、目標、道徳観という点で、とても同じ考えを持っていると思います。ただ、彼女は私よりもずっと雄弁です。私は文章を書こうとしたことがありますが、彼女と比較すると、物足りない!共同設立者として彼女のクリエイティビティを借用することは、本当に素晴らしいことです。私たちはふたりともクレイジーなアイデアを持っており、それを一緒に解決することができるのです。

イサベル 同じビジョンを持っていても、アプローチがまったく違うのは、彼がギャラリーや表舞台で活躍した経歴を持っていることも影響しています。いっぽう、私は裏方でじっくりとコンセプトやテーマを考えるのが好きです。私は内向的で、初対面の人と話すとすぐに疲れてしまうので、ウィレムがギャラリーの表舞台に立つことに抵抗がないのは嬉しいことです。たしかにぶつかる日もありますが、私たちはこのプロジェクトに力を入れているので、いつもそれを乗り越えようとしています。それは、ギャラリーが決してたんなる一枚岩ではなく、ひとつのビジョンやひとつのモデルのような空間であるということでもあると思うのです。つねに変化し続け、そこにアーティストや友人などが加わると、進化する共同作業のようなものになるのです。

ウィレム 数ヶ月前までは、人に助けやアドバイスを求めることに抵抗があったのですが、いまではいつもそうしています。

イサベル フィードバックを与えたり、受けたりするプロセスは、学問やメディア業界ではとても一般的なことです。ギャラリーの世界ではもっと競争的で、アイデアを共有することはあっても競争的な側面があるように思います。

こけら落とし展「Rendering」(2022)の展示風景より Photo by Zed Leets

──最後に、PHDグループの運営でもっとも驚いたこと、予想外だったことを教えてください。

イサベル まず、ギャラリーを開くというアイデアがまだ頭のなかにあったとき、友人や味方だと思っていた人たちからネガティブなフィードバックを受け、実行に移せなくなりそうになったことがあります。ふたつ目は、自分たちでも驚くほど、このプロジェクトにこだわり続けたことです。3つ目は、ギャラリーが真剣な場所であること、そしてその空間に対する私たちのコミットメントをほかの人が見てくれることが、とても素晴らしいことだったということです。美術館の学芸員やアーティスト、コレクターが私たちの努力に感銘を受け、空間の細部にまで私たちの思いが込められていることを喜んでくれたことは、人生を肯定してくれるような気がしました。

ウィレム そうですね。もうひとつ驚いたのは、私たちがどれだけ自分たちを追い詰めたかということです。私たちふたりは、これまでも一生懸命に仕事をしてきましたが、この空間のリノベーションは、言葉では言い表せないほど大変なものでした。

Tucked away on the top floor of an unassuming commercial building⁠ in Hong Kong’s Causeway Bay is Property Holdings Development Group (PHD Group), a budding contemporary art gallery that opened its doors in early 2022. Its co-founders are husband and wife duo Willem Molesworth, former director of de Sarthe Gallery and Ysabelle Cheung, art writer and critic, and former managing editor of ArtAsiaPacific. The pair’s intriguing amalgamation of knowledge and experience is marked by PHD Group’s tongue-in-cheek name, which joshes the city’s indulgence in real estates and property investment, whilst alluding to the elitism and cultural gatekeeping within the art world and academia.

In the face of an increasingly hegemonic and homogenised commercial art world, PHD Group sets itself apart by challenging the boundaries between market-driven art and critical engagement. Its satirical approach elucidates the intertwining of these worlds but asserts that commercial agendas should not be entirely divorced from critical engagement. Originally a private members’ club that belonged to Cheung’s late grandfather and his two business partners in the 1970s, the gallery spans a 3,000 sq ft ‘adapted and updated’ space. Here visitors will find many characteristics from the club’s 70’s heyday salvaged and restored including the layout, furniture, memorabilia, and collections of erotica and coins. The clubhouse’s early spirit and family legacy are thoughtfully considered and embedded within the space: a visual attestation of the gallery’s refreshing sense of criticality and self-reflexivity.

Tiffany Leung (TL):  Let’s start from the beginning! When and how did the idea for PHD Group come about?

Willem Molesworth (WM): They came about pretty organically, we did not ever set out opening a gallery as one of our ambitions in life. For pretty much my entire career I’ve always said I never wanted to open a gallery because I know how challenging it is. But when my time at de Sarthe Gallery had come to an end and Ysabelle had been working on her novel for about a little over a year at that point, we started having conversations about what we wanted to do.

Installation view of "Rendering" at Property Holdings Development Group, Hong Kong, 2022. Photo by Zed Leets

There's a personal element to it, I really enjoy working with Ysabelle, that's how we first met—as colleagues in New York. We thought about building on a previous project Suitcase Institute, but we realised that the nonprofit model cannot serve what we wanted to do and achieve due to the lack of flexibility and agency. That’s how we came to, frankly, an unexpected conclusion that we should open an art gallery.

TL: Are there any galleries or project spaces that have inspired you?

WM: Empty Gallery in Hong Kong is definitely one, I think they have done something very different. Another local gallery that we have long admired is Hanart TZ, whose programmes are really interesting and rooted in Hong Kong in a meaningful way, which resonates with PHD Group.

TL: Both of you have lived and worked in Hong Kong, New York and London, why did you decide to open the gallery in Hong Kong, and what does it mean for you?

Ysabelle Cheung (YC): Hong Kong is where we found our strongest artistic network. And by that, I don’t just mean all the galleries, museums and curators, but also artists, other art workers and friends. We have worked various jobs in Hong Kong, and I feel like we are part of a generation that has grown up together as an artistic community, which is not easily replicated elsewhere. We feel a stronger connection here than we did in London and New York previously.

Installation view of "Rendering" at Property Holdings Development Group, Hong Kong, 2022. Photo by Zed Leets

Another big factor is coming across this space that belongs to my family—we aren't constrained by a lot of financial limitations that a new gallery might have. While we do have other concerns, I think that it has been really helpful to get us off the ground. I don’t want to say it’s destiny or fate, because there’s something very mythological about that, and I’d like to think that Willem and I have worked really hard to get to this point, but it did seem like we were given a key to something special.

WM: I’ve been in Hong Kong for about 6 years now. I love this place a lot and have a deep connection with the community Ysabelle talked about. Hong Kong is in this node, we’ve gone through some serious trauma which has brought us together through deep bonds. The city has a lot to offer creatively, and I don’t think that is honoured or acknowledged enough here and abroad. We want to address and rectify that.

TL: Were your hearts set on the clubhouse from the beginning?

YC: It wasn't always the clubhouse. In fact, we had considered other experimental options including our own apartment. But when we got in touch with Beau Architects who helped adapt the clubhouse, their engagement opened up possibilities. I also suppose apartment galleries have been done before in Hong Kong, and when we came across the clubhouse, we became very interested in this idea of preservation, especially of heritage and sites in a way that's different from the Jockey Club. What they've done with Tai Kwun is beautiful, but we’re doing something different because it is the preservation of family history and alternative narratives.

Installation view of "Rendering" at Property Holdings Development Group, Hong Kong, 2022. Photo by Zed Leets

TL: Can you tell us more? What was it like when you first came across it?

YC: There were many issues with it because it had been abandoned for the past 10 years or so. We brought in a few people to see the space, one of them being Beau Architects who were so enthusiastic about it. I think that was what convinced us that we could make it happen. There were certainly some days where it felt like we were dying during the renovation, but I feel like death is a kind of rebirth and through this process we've learned a lot about the space in a way that feels very intimate.

WM: It wasn’t in a good shape at all but there was something that kept calling to us.

TL: You produced a fascinating video that captured some of your late grandfather’s belongings, and collection of objects and art, which can be watched on PHD Group’s social media platforms. Can you tell us more about your process of sorting and archiving? 

YC: Painful is the word I would use to describe that process, because a lot of the items were clearly damaged or neglected. But for Willem, it was a wonderful moment of rediscovery so there was this tension between us in which I was very reluctant to go through all the items and he was very enthusiastic—that's how we got it gone. Willem did everything and through him I could appreciate my grandfather's collection which was similar to hoarding.

It was around the same time I saw the exhibition Portals, Stories, and Other Journeys at JC Contemporary in Tai Kwun. It was curated by Asia Art Archive and based upon the personal archive of the late Hong Kong artist Ha Bik Chuen (1925–2009). That was very meaningful to me. The show asked the question of what it means to archive and go through somebody’s life work. AAA also published a text called The Orpheus Double Bind: What Can Writing Save?, which is about resurrecting the memory of a person or historical event. This was an interesting discussion point for Willem and I as we had no photos of how the clubhouse looked originally, so we had to reinvent the environments of each room, trying to adapt while updating it for the purpose of showing contemporary art. Every design and decisions made in the space were very premeditated, and we were always thinking about the identity of the space.

WM: The process of adaptation is the key to how we've conceived the place. We’ve tried to preserve the function of it being a space of gathering and sharing, and did not take down any walls nor put up new ones. We made as few surgical changes as possible and just worked with the pre-existing form of it.

Installation view of "Virtue Village: Village Porn" at Property Holdings Development Group, Hong Kong, 2022. Photo by Zed Leets

TL:  These ideas around archiving, preservation and personal relationships, do they feed into your modes of working with artists and collectors?

YC: I would say, although not intentional on our part, all of our artists have practices that are very much research-based. Also, a lot of them are deeply interested in this idea of collective practice or collaborations, which we’re also very interested in. I think that's very reflective of Hong Kong and the artistic community here as well.

WM: We really try to embrace that within the program. We represent two artists duos and a lot of the artists we work with are interested in engaging with others to create their artworks. Even our name PHD group, while it is a pun, is also a nod to the fact that we think of ourselves as something like a collective. We want to be conscious of that in everything we do.

TL: How do you create a meaningful space within a commercial gallery setting? I feel that there is inherent tension between artists, collectors, and the public, in terms of what art means and how it is consumed.

YC: This is an interesting question, and one that we have talked about before even we decided to open the galley. I think tensions are inevitable, but given both of our experiences in the field, we can meet those tensions and challenges in an interesting way. This means having conversations that are uncomfortable. For example, we had a textile piece consisting of menstrual blood by Hong Kong artist Michele Chu displayed in the viewing room, which is the most sales-oriented space in the gallery. We had some adverse reactions from collectors, some of them were disgusted or offended by the piece. And so for us, instead of removing it or agreeing with them, we decided to have a conversation and stay in the room with them, because the longer that somebody stayed with the work, the more they realised that there's nothing offensive about the material. It's just preconceived notions about what menstrual blood is, and social expectations around women and their bodies.

Installation view of "Virtue Village: Village Porn" at Property Holdings Development Group, Hong Kong, 2022. Photo by Zed Leets

I think this is a good example of how we’re approaching the gallery. There are going to be works that are not considered suitable for collections or readily consumed by a larger demographic, but we're ready to take on that challenge. I wouldn't say we always enjoy it because it is difficult, but we're willing to engage with that discomfort and, hopefully, be a platform for people to discuss ideas.

WM: It's about trying to ask more of the market and question everything we can. We want to hold up a magnifying glass and ask ‘how could we do this better?’, ‘how could we engage with this and have conversations with collectors about that?’ Also, I want to talk about a space within the gallery called The Study where people can converse, hang out and share ideas outside of the traditional structures of a commercial gallery.

YC: It’s similar to the history of cafes in Hong Kong—similarly explored in the exhibition Café do Brasil curated by Qu Chang at Parasite in 2019—as a kind of radical social space. Of course, we are a commercial gallery, but I do hope that there can be some collaboration between being commercially-led and critical, that's pretty interesting to me.

TL: Can you tell us more about your upcoming plans for exhibitions and programmes?

WM: After our current exhibition Virtue Village: Village Porn, we may be exhibiting some of Ysabelle’s grandfather’s antique erotica collection during the summer. In September we’ll be showing Sasaoka Yuriko’s new videos and paintings. The exhibition will be carnivalesque, and is all about mental health and fish heads. In her videos, Yuriko creates puppets and dolls using the heads of the fish that she eats, as a way to give them a new life, it’ll be wild! After that we’ll be working with Dylan DeRose in November, and Zheng Mahler and Michele Chu the following year.

Installation view of "Virtue Village: Village Porn" at Property Holdings Development Group, Hong Kong, 2022. Photo by Zed Leets

TL: Can I ask you what is it like to work together? How are you similar or different in your approaches?

WM: I think the two of us are very much of the same mind in terms of how we perceive certain things, our goals, and our moral compasses. But she's just so much more eloquent than I am. I’ve tried writing but when compared to hers, the feeling of inadequacy is so deep! it's been really incredible to riff off her creativity as the co-founder. Both of us have crazy ideas and we’re able work through them together.

YC: We might have the same vision for something, but have very different approaches partly because of his background in galleries and front-facing roles. Whereas I am very comfortable behind the scenes, taking my time to mull over certain concepts or themes. I'm actually very introverted and can become exhausted quickly when talking to new people, so I’m happy that Willem is comfortable being the front-facing identity of the gallery. There are definitely some days when we clash, but we're so committed to the project and always try to work through them. I think that also means the gallery will never be a monolithic, one vision, one model, kind-of space. It is always changing, and when you add artists, friends and others into the mix, it becomes like an evolving collaborative process.

WM: A few months ago I wasn’t comfortable with asking people for help or advice, but now I do it all the time.

YC: The process of giving and receiving feedback is very common in academia and the media industry. In the gallery world it seems to be much more competitive, you might share ideas but there's an edge of competition about it.

Installation view of "Rendering" at Property Holdings Development Group, Hong Kong, 2022. Photo by Zed Leets

TL: To conclude, can you tell us about the most surprising or unexpected aspect(s) of running PHD Group so far?

YC: The first instance is when the idea of opening a gallery was still floating in our minds, we received some negative feedback from people we thought were our friends and allies, it almost stopped us from going ahead. Secondly, it was surprising that we continued, and stayed so committed to the project. The third thing was how wonderful it was when other people saw the gallery as a serious place, and they saw our commitment to the space. It felt life-affirming to see museum curators, artists and collectors impressed by the effort we have put in, and enjoyed the thoughtfulness we embedded into every detail of the space.

WM: Absolutely, another surprising element was just how hard we pushed ourselves. We’ve both worked very hard our entire career but renovating this space was insane, it’s hard to fully describe the experience.