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NFTはアートワールドを更新できるか? スタートバーンCEO・施井泰平に聞く

今年に入り、アートマーケットの世界でもっとも注目を集めるトピックは間違いなくNFT(非代替性トークン)を使用したアートだろう。この盛り上がりについて、日本でいちはやくアートとブロックチェーンの関係に注目してきたスタートバーン株式会社CEOの施井泰平に話を聞いた。

聞き手・文=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

スタートバーン株式会社CEO・施井泰平

──いま、NFT(非代替性トークン)を使用したアートの売買が盛んになってきていますが、ブロックチェーン技術そのものへの注目も高まっていると思われますか?

 そうですね、逆輸入的にNFTアートからブロックチェーン全般に興味を持ちだした方も多いと思います。いままでスタートバーンはブロックチェーンで証明書の発行をしてきましたが、NFTバブルによってアートがブロックチェーンと紐づくことの価値がようやく認識されてきた感じもあります。

 そもそも僕らがブロックチェーンをアートと紐付けてきたのには理由があり、ブロックチェーンは流通の信頼性がもっとも担保できる技術だからです。というのも、現在の美術市場で流通する作品はその約半数が贋作とも言われている。この世の中で、贋作がまったくない状態になったら、市場規模はどうなるか? それこそ10倍、100倍の世界になるのではないかと思います。そうするとギャラリーも活性化するし、アーティストもより作品を売りやすくなります。さらには批評やマーケットと縁遠かったカッティングエッジなアートまで活性化します。そういう仮説が、いまのNFTバブルでは証明されつつあると僕は考えています。

スタートバーンが提供するブロックチェーン証明書「Cert.」のICタグ

──2018年に雑誌『美術手帖』でもアートとブロックチェーンの特集を組みました。それから2年が経ち、アートとブロックチェーンを取り巻く環境はどれくらい変わった、あるいは変わっていないと思いますか?

 NFTアートが注目され大きな資産価値を持ち始めたのは何よりの変化ですし、サービス数的にも技術的にもアートxブロックチェーンを取り巻く環境は大きく進化しているとは思います。しかし、本質的な意味でアートとして価値を担保したり継承するための土壌はまだまだ生まれ始めのような状態だと思います。まずいまのNFT市場というのは互換性がないんですね。例えばあるマーケットプレイスで作品を買っても、別のマーケットプレイスで売却した場合には還元金の設定や規約の継承が途切れてしまうという問題がある。そういう意味において僕らが当時抱いていた課題は重要性が増していると言えます。そもそも互換性を持たせるのは、技術的にも難しい上に二次流通が発生して初めて必要になるもので、作品の流通量が多くないと意味をなしません。ようやく課題そのものが聞き入れられるようになってきた段階かもしれません。いっぽうで、そのような世界観含め、アートがブロックチェーンと絡んで色んな効果を生むことが夢物語ではなく現実化してきているという点では大きな前進を感じます。

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