「紅白歌合戦」の舞台美術はどのように生まれたのか? NHKデザインセンター森内大輔に聞く
日本における大晦日の風物詩『NHK紅白歌合戦』。数千人のスタッフが参加するなど、まさにNHKが総力を挙げて制作する番組だ。ウェブ版「美術手帖」では『第68回NHK紅白歌合戦』本番前日のNHKホールに潜入。その舞台裏を取材するとともに、今回の舞台美術や映像をデザインしたNHKデザインセンターのチーフプロデューサー・森内大輔に、舞台美術に込めた狙いなどを聞いた。

|研究したのは「大阪万博」
渋谷の街を舞台に、出場歌手が勢ぞろいするグランドオープニングで幕を開けた2017年のNHK紅白歌合戦。第68回を迎えた今回の紅白は、クラシックなバックダンサーの衣装や、鮮やかなネオンサインに彩られた夜の銀座のイメージなど、1960〜70年代の高度経済成長期の日本を彷彿とさせる演出が随所に見られた。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを約2年後に控え、1964年に開催されたかつての東京オリンピックや、その前後の時代動向が紅白に反映されているのは明らかだが、より直接的に参照したものは別にあったという。そう語るのは、今回の舞台美術や映像をデザインしたNHKデザインセンターのチーフプロデューサー・森内大輔だ。





|紅白の舞台も時代の流れに沿って変化している
今回の紅白では、頚椎手術を受けたYOSHIKI(X JAPAN)のドラム演奏復活、桑田佳祐の特別出演、毎年恒例のPerfumeとライゾマティクスのコラボレーション、AKB48渡辺麻友のラストステージなど、多くの見どころが散りばめられていたが、やはり特筆すべきは今年9月の引退を発表している安室奈美恵のスペシャルステージだろう。巨大スタジオのブラックボックスに浮かび上がるように設えられた長大な純白のランウェイと矩形のゲート群。そこに真っ白なドレス姿で佇む安室には「孤高」という言葉が似合う。この舞台美術を設計したのも森内だ。

