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フランスの名門美術学校「ボザール・ド・パリ」。卒展から見るアーティストへの道

フランスの美術学校でももっとも長い歴史を持ち、モロー、マティスにブランクーシなど数々の著名アーティストを輩出してきたパリ国立高等美術学校。同校を卒業するアーティストたちの創意やプロ意識とは? 昨今のボザールの取り組みやギャラリーとの連携も含め、リポートする。

文・写真=飯田真実

ニナ・ジャナスリヤ les caresses qui piquent 2023ニナ・ジャナスリヤ(Nina Jayasuriya)は、俗と聖のつながりを喚起する。子牛やスリランカの神の像がタトゥーされた牛革張りのソファには無数のお香が刺され、周囲に炻器でできた靴が脱ぎ散らかされた冒涜的な祭壇。今年ヴェネチア・ビエンナーレのフランス館を代表するジュリアン・クルーゼに師事。パリの大手画廊メヌールでの展示を準備中(本文後半でもう少し言及する)

ボザール・ド・パリ

 フランスには全国に公立の美術学校があり、国費で運営される国立校は9都市に13校、主に地方自治体によって運営される地方立校は37校もある。これらのほとんどは造形美術に関する一般的な教育を提供しているが、工業デザインや写真など、専門を特化した学校もある(*1)。 

 1648年に設立された王立絵画・彫刻アカデミーを継承する国立パリ高等美術学校(通称「ボザール・ド・パリ」)は、同国の王政と共和政の歴史に連動しながら、1816年創設のアカデミー・デ・ボザールがフランス文化財博物館の跡地に開校した。サンジェルマン・デ・プレ地区にあるこの由緒深い校舎に加え、郊外サン・トゥアンに元工業用施設約1000平方メートルの広大な工房を有する。

セーヌ川左岸に面する「パレ・デ・ボザール」が優秀卒業生展の会場だ

 1984年からフランス文化省が管轄する現在の運営体制となり、絵画や彫刻以外にも、インスタレーション、写真、ヴィデオ、各種デザインや舞台芸術まで幅広い分野で高度な創作技術を備えた芸術家を養成している。デッサンや美術史を重んじる伝統的な美術教育方法に加え、批評精神や時代の傾向を掴む力も得られるように様々な理論と技巧の習得、世界の提携校(*2)との交換留学も可能だ。とくに著名な芸術家ら(*3)による「アトリエ実習」では、それぞれユニークな指導のもと日々の創作や校外での発表が行われている。

ソフィア・サラザール・ロザレス What does the city hide in a hug 2023
都市で使われる異素材や原材料が、人類史やコミュニケーションの不毛さを代弁し和解するような造形は、1999年エクアドルの首都キト生まれのソフィア・サラザール・ロザレス(Sofia Salazar Rosales)の彫刻作品。タチアナ・トゥルーヴェ、ペトリット・ハリライ&アルヴァロ・アルバーノに師事した
ヴィクトル・プシュ=ペルショー Bankai, musée de l’adolescence 2023
日本のアニメやマンガからも多大な影響を得ていると語るヴィクトル・プシュ=ペルショー(Victor Puš-Perchaud)による絵画には、黄から橙のグラデーションを持った色面による鏡がある。自己探求の画面上に、別世界や他者の像の反映を誘う。ドイツの画家ティム・アイテルに師事した

 毎年の特別講座に呼ばれるゲスト講師も多く華やか(例えばデッサン講座にウィリアム・ケントリッジなど)で、講演会は一般公開されることもあり人気だ。さらに、ボザール・ド・パリでは首都にある25のグランゼコールやグランテタブリスマンといった特別高等教育機関による「パリ文理研究大学(PSL、*4)」のひとつとして、領域横断的な実験や研究も行うことができる。2012年からは、科学・芸術・創造に関する先駆的研究を行うための博士課程「SACRe(*5)」も始まった。

倍率、学費、年間予算(*6)

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