ボザール・ド・パリ
フランスには全国に公立の美術学校があり、国費で運営される国立校は9都市に13校、主に地方自治体によって運営される地方立校は37校もある。これらのほとんどは造形美術に関する一般的な教育を提供しているが、工業デザインや写真など、専門を特化した学校もある(*1)。
1648年に設立された王立絵画・彫刻アカデミーを継承する国立パリ高等美術学校(通称「ボザール・ド・パリ」)は、同国の王政と共和政の歴史に連動しながら、1816年創設のアカデミー・デ・ボザールがフランス文化財博物館の跡地に開校した。サンジェルマン・デ・プレ地区にあるこの由緒深い校舎に加え、郊外サン・トゥアンに元工業用施設約1000平方メートルの広大な工房を有する。
1984年からフランス文化省が管轄する現在の運営体制となり、絵画や彫刻以外にも、インスタレーション、写真、ヴィデオ、各種デザインや舞台芸術まで幅広い分野で高度な創作技術を備えた芸術家を養成している。デッサンや美術史を重んじる伝統的な美術教育方法に加え、批評精神や時代の傾向を掴む力も得られるように様々な理論と技巧の習得、世界の提携校(*2)との交換留学も可能だ。とくに著名な芸術家ら(*3)による「アトリエ実習」では、それぞれユニークな指導のもと日々の創作や校外での発表が行われている。
毎年の特別講座に呼ばれるゲスト講師も多く華やか(例えばデッサン講座にウィリアム・ケントリッジなど)で、講演会は一般公開されることもあり人気だ。さらに、ボザール・ド・パリでは首都にある25のグランゼコールやグランテタブリスマンといった特別高等教育機関による「パリ文理研究大学(PSL、*4)」のひとつとして、領域横断的な実験や研究も行うことができる。2012年からは、科学・芸術・創造に関する先駆的研究を行うための博士課程「SACRe(*5)」も始まった。