杉本竜『これから学芸員をめざす人のために』( 創元社、2023)
最初に自分の本を持ってくるのも如何なものかとは思うのですが、一応紹介させてください。学芸員志望者に向けたいわゆる「なるには本」......と思いきや、それだけではなく、すでにこれまで各所でお話していますが、私自身が学芸員を目指していたときに欲しかったガイド本、というテイストで書きましたので、とても実践的です。
また、タイトルから学芸員志望者向けの内容のように思えますが、実際はなって2~3年という若手の学芸員にもおすすめの本です。現役の学芸員の方からも、「撮影の6パターン、参考になります!」と言われるなど、さまざまな階層に「刺さる」内容となっています。
「ラカン・ダカラン」「やれんのか!」「月島くん」といったワードが気になる方、ぜひお手にとってご覧ください。
滝登くらげ『学芸員の観察日記 ミュージアムのうらがわ』(文学通信、2023)
SNSで人気の四コマ漫画を書籍化したもの。私は面識がないのですが、滝登先生はおそらくきちんとした学芸員だと思います。きちんとしてない学芸員は誰なんですか、とか聞いてはいけませんよ。さて、本作品の魅力はその「あるあるあるある!」の内容に尽きます。
さらに動物に仮託した学芸員のキャラクターがとても魅力的で、これぞ令和時代の「ミュージアムのもり」でしょう。また、おそらく自伝になるのでしょうが、「【外伝】学芸員の就活日記」からは、就職の際のご苦労が察せられます。現実を踏まえつつ、厳しさの中に希望をにじませるそのまなざしが、本作の一番の魅力だと思います。
どこかでお会いした際には「お前、くらげだろ!」と藤波辰爾ばりのマイクアピールをしたいところですが、じつはもうすでに会ってるかも知れないところがこの業界の恐ろしいところです。
オノユウリ『美術館で働くということ』(KADOKAWA、2015)
東京都現代美術館の学芸員業務をコミックエッセイで紹介したもの。都現美(東京都現代美術館の略称です)のショップで買ったのも良い想い出です。帯には「学芸員って、アートで優雅でなお仕事…♪じゃないんです⁉」とあるのですが、現代美術の館の話ですから、正直古美術や歴史界隈を歩んできた評者には知らないことばかりでした。
ただ、「収蔵作品」を「子」というところなど、ところどころ「あ、繋がってるな、共感が持てるな」というところは見つかります。現代美術の館の雰囲気を伺い知ることができる一冊。