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注目を集めるNFTアート。新たなマーケットに求められるルールの明確化

いま、アートの世界をもっとも賑わせているトピックのひとつである「NFT」や「クリプトアート」。マーケットではオークションハウスが参入し、現代美術のアーティストもその可能性を探るこの新しいジャンルは、法的にどのような課題があるのか? Art Lawの専門家である弁護士・木村剛大が解説する。

文=木村剛大

Beeple  Everydays: The First 5000 Days 2021 出典=クリスティーズ・ウェブサイト(https://onlineonly.christies.com/s/beeple-first-5000-days/beeple-b-1981-1/112924)

 2021年2月25日から3月11日にわたり行われたクリスティーズ・ニューヨークのオンラインオークションでBeepleのNFTデジタルアート作品《Everydays: The First 5000 Days》が現存アーティストによる落札額第3位となる約75億円(6934万6250ドル)で落札され、NFTアートに注目が集まった。

 続いて、2021年4月12日から14日に行われたサザビーズによるNFTオークションでは、Pakの《The Pixel》が約1.5億円(135万5555ドル)で落札された

Pak The Pixel 2021 出典=サザビーズ・ウェブサイト(https://www.sothebys.com/en/digital-catalogues/the-fungible-collection-by-pak)

NFTとは?

 NFT(Non Fungible Token、非代替性トークン)は、ブロックチェーン上での取引に用いられるユニークな(代替性のない)トークンのことを指す。

 代替性のないトークンを発行するためのスマートコントラクトの規格であるERC721が通常用いられている(*1)。その他主にブロックチェーンゲームで用いられるERC1155という規格もある。

 デジタル作品はコピーしても劣化しない性質があるため、コピーはいくらでも制作することができる。しかし、NFTと組み合わせることにより、デジタル作品にも唯一性を付与することができる。

 NFTには、代替性のないユニークなトークンIDが付与される。

Beeple Everydays: The First 5000 DaysのトークンID 出典=クリスティーズ・ウェブサイト(https://onlineonly.christies.com/s/beeple-first-5000-days/beeple-b-1981-1/112924)

 ブロックチェーンは大容量のデータを保存するのには向かないため、よほど小さな容量のデータでない限り、ブロックチェーン上にデジタル作品のデータそのものが保存されることはない。デジタル作品のデータ自体は、ブロックチェーン外の別のサーバーに保存されているのが現状である。

 そのため、あくまでブロックチェーン上のNFTとデジタル作品のデータがリンクによって紐付いている状態であることを理解しておく必要がある。

 NFTは、OpenSeaNifty Gatewayなどの取引市場で売買される。

絵画や彫刻との違い

 「コレクターのお作法。買った作品を展示しよう!でもそれってOK?」で「作品を購入してもコレクターには作品の『所有権』があるだけで、『著作権』がアーティストにあることに変わりはない」と解説した。

 NFTアートでも、作品の著作権を譲渡すると明示するケースは見当たらないので、著作権が作品を創作したアーティストにあることは、絵画や彫刻と変わらない(*2)。

 しかし、無体物であるNFTアートでは有体物を対象とする「所有権」は観念できない。購入者は、作品の所有権も著作権も取得しない。そうすると、購入者はNFTアートを買うことで何を取得するのだろうか?購入者ができること、できないことのルールがない点が絵画や彫刻との大きな違いである。

 そもそも絵画や彫刻を買うことで、私達は何を買っていたのか、何ができるようになるのかを考えてみよう。大きく分けると、(1)原作品へのアクセスと(2)資産としての価値(売却できること)の2点が考えられる。

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