小池百合子東京都知事が旗振り役となって行われた「トーキョーワンダーサイト(TWS)」の改編。文京区本郷と墨田区立川にあったTWSは「トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)」となり、「TOKAS本郷」と「TOKASレジデンシー」の2館でアーティストの育成・支援や展覧会、レジデンス・プログラム、教育事業などを行う施設として新たなスタートを切った。
いっぽう、渋谷区神南のTWS渋谷は異なる機能を持つ施設として生まれ変わった。それが本稿で取り上げる「東京都渋谷公園通りギャラリー」だ。渋谷区立勤労福祉会館にスペースを構えるこの施設は、「『アール・ブリュット』作品をはじめ、独自の発想により生み出される作品の展示や交流、情報発信を行っていく」(同サイトより)もの。
同ギャラリーを運営しているのは東京都現代美術館。これは、2015年から16年にかけて行われた東京都芸術文化評議会の専門部会である「アール・ブリュット検討部会」の、東京都現代美術館が培ってきたネットワークやノウハウなどを最大限活用すべき、という報告を踏まえたものだという。
同ギャラリーでは杮落としとして大宮エリーや小林正人、特定非営利活動法人クリエイティブサポートレッツ、戸次公明が参加する企画展「あら まほし Art, anything to access a world」が開催された(11月9日〜12月17日)。これはアーティストと障害者の表現をつなぐ試みとしての展覧会だったが、ギャラリーとして今後の企画展に一貫したコンセプトなどはあるのだろうか?
これに対してギャラリー側はこう語る。「基本共通コンセプトは「多様性」であり、共生社会の実現に向け障害者アートの展示だけでなく、子供や高齢者などの多様性を活かした展示やワークショップを企画していく予定です。来年1月から3月は、作家と子供たちの交流をテーマとした展覧会を予定しています」。
ギャラリーは2018年3月まで展示を行ったのち、改修工事を経て、19年度にリニューアルオープンする予定となっており、その後、展示・制作・交流の拠点として運営していくという。
「多様性」が声高に叫ばれる現代において、「様々な作家や作品、その生まれた背景を通じてアートや人間の多様性について理解を深めることを目的としている」という同ギャラリーは、表現の領域でどのようにこれを具体化し、示すことができるのか。2020年以降も踏まえた今後の取り組みについてもその動向に注目したい。