ミュシャと草間、国立新美術館がツートップ
2017年上半期で1位の座に輝いたのは、国立新美術館で開催された「ミュシャ展」の65万7350人だ。同館は昨年、「オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵 ルノワール展」(66万7897人)で年間首位となっており、「ミュシャ展」もこれに匹敵する数字を記録した。
同展は、アール・ヌーヴォーを代表するチェコの芸術家、アルフォンス・ミュシャの代表作であり超大作の「スラヴ叙事詩」が、チェコ国外で初めて揃って展示されることで、開催前より大きな話題を集めていた。会期中は一部の「スラヴ叙事詩」作品が撮影可能だったこともあり、SNSでのシェアなどでより多くの動員を集めたと考えられる。また、会期末には美術館の前庭にも入場待ちの行列ができるなど、一昨年の「若冲」展(東京都美術館)を彷彿とさせる光景が見られた。
また、国立新美術館ではこのほか「草間彌生展 わが永遠の魂」が51万8893人で2位にランクイン。同展は草間にとって過去最大級の個展ということもあり、報道内覧会にはかつてないほどの報道陣が押し寄せたことも印象的だった。展覧会会場では、草間が2009年から取り組んでいる大作シリーズ「わが永遠の魂」を中心に、世界初公開を含む約270点が展覧された。草間自身が発した「私の心の限り、命の限り、真剣につくり続けたこれらの我が最愛の作品群を私の命の尽きた後も、人々が永遠に私の芸術を見ていただき、私の心を受け継いでいってほしい」「私の芸術を死んだ後までも愛してください」といった死への言及も強い印象を与える展覧会だったと言える。
3位にランクインした東京都美術館「バベルの塔」展は、24年ぶりに来日したブリューゲル1世の名作《バベルの塔》を中心に、ヒエロニムス・ボスの傑作で日本初公開となった《放浪者(行商人)》と《聖クリストフォロス》など、オランダの至宝が揃って展示された。これに加え、東京藝術大学COI拠点がオランダ芸術科学保存協会と連携し制作した、《バベルの塔》の実物比300パーセントと言う巨大なクローン文化財(高精細複製画)が併せて展示された。また、「プロジェクトバベル」と称し、マンガ家・大友克洋や、画家・ヒグチユウコなどを起用したプロジェクトを展開することで、より広範囲に展覧会のアピールができたのではないだろうか。
このほか、10位圏内には東京国立博物館の特別展が3つランクイン。同館の安定的な集客力の高さがうかがえる。
下半期には「ジャコメッティ展」(国立新美術館)や「サンシャワー展」(森美術館・国立新美術館)、「ボストン美術館の至宝展」(東京都美術館)などがあるが、果たしてどこまで入場者数を伸ばすことができるか。注目したい。